しっぽの手入れ エクストラ

『若君、若君ぃ』
ぴょこぴょことメフィストの使い魔たちがやってきた。
「お、もうそんな時間か」
使い魔たちの時間は正確だ。
燐が部屋の時計を見ると10時半を過ぎたところだ。
先日、ファウスト邸でしっぽの手入れを教えてもらってから、翌日にはしっぽ用のシャンプーがダースで届き、次いでメフィストの小さな使い魔たちの来訪を受けるようになった。
『しっぽのお手入れの時間です』
『しっぽ、しっぽ』
いつも四・五人で来る使い魔たちは白いベレー帽を被った腰巻姿だ。
とてもミスマッチだが本人達は気にしていないようだ。
帽子暑くないのかな・・・と、いつも思うが、わらわらきゃっきゃと楽しそうに燐のしっぽを洗う姿が可愛くて聞きそびれてしまう。
『若君のしっぽはビロードのようですね』
『すべすべしてて』
『毛も柔らかいし』
『つるつるです』
『私たち、若君のしっぽが大好きです』
ニコニコしながらそんなことをずっと話している。
「お前達のおかげで毎日しっぽがさっぱりしてて、俺もありがたいよ」
頭をガシガシと泡立てながら燐が言うと小人達の声がピタリと止む。
「ん?どうした?お前達」
小人達の手も止まっているので、燐は訊ぶかしんで振り返ると小人達が顔を桃色にして硬直している。
「アイン?ツヴァイ?ドライ?フィーア?」
小人達の名前を呼ぶ。燐は良く知らなかったが、ドイツ語の1〜4のことだ。
『若君・・・』
『天然・・』
『小悪魔・・』
『末恐ろしい・・』
『さすがご主人様のEin Begleiter(伴侶)・・・』×4。
「??おまえら、何言ってるのか分かんねぇよ」
『いいんです、若君はそのままで』×4。
燐は四人一斉に声を合わせて言うものだから、迫力負けしてしまった。
「よく分からんが、まぁ、いいか」
[若君ってちょっとアホの仔なところがいいんだろうなぁ・・・]×4。
小人達がそんな感想を持っていることを燐は知らない。

2011/11/20

コメント:
小人がしっぽに触る・・・弱点を預けることになるのですが、燐はそんなことはお構いなし。自分でやるより『気持ちいい』し『さっぱり』する。メフィストに触られるよりも、『いい』気がする。そんなことを聞いてメフィストが『やっぱり自分が行きます、いいですよね?燐くん』とか嫉妬してたらいい(笑)

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