ひとでなしの恋 R side

俺は雪男が好きだ。
雪男は双子の弟なんだが、その・・・なんというか。
『恋』してる。・・実の弟に。


高校に進学した二年の一学期の終わりに、雪男から告白された。
その告白がどれだけ勇気のいることか、俺は知っている。
でも、俺は知っていて、自分の気持ちに口を噤んだ。
口を噤んだくせに、雪男に押し倒されて受け入れた。
俺は怖かった。
男同士だし、兄弟だし、しかも、俺は悪魔だ。
人ですらない。
それでも、雪男が好きだ。
好きで、好きで、どうしようもなく好きで。
だから、いつでも、雪男の手を離してあげられるように。
俺は俺が雪男を好きだということをあいつに悟られてはならない。
ごめんな。臆病な兄貴でごめん。
お前を傷付けることしか出来ないから、俺はない頭で考える。
一生懸命考える。
俺がお前を好きだってこと、お前が知らなければ、そして、
俺がそういった行為にだらしないとお前が思ってくれたなら、
きっと、俺に幻滅して、自然消滅するんだろう?
だから、それまでは、お前を、『俺を好きだという』お前を俺にくれ。
それだけで俺は満たされる。
偽りしか吐き出せない俺に、似合いの紛い物の『愛』を。
ありがとう、俺の大切な弟。
俺は、口を閉ざしたまま、今日、物質界を去る。
お前は俺に愛想を尽かしたろうか?
僅かに急所を外したことを、それが俺の歪な『愛』の形だと、
知られたりはしなかっただろうか?
偽りの中に忍ばせた本物に、どうか気付かないままでいて欲しい。


俺は虚無界へ、青焔魔の元へ行く。
呪縛に囚われた振りをしている俺を待っている。
終焉の時刻を告げるは業火。
さあ、俺を殺せ。
俺を生み出した原始の暴虐、残忍で狡猾な悪魔の神よ。
密やかな恋を胸に、愛しい君の世界に救済を。
同じ胎から生まれ出でた最愛の人、どうか幸せに満たされた人生を送って欲しい。
長生きして、大往生。最期の言葉は・・・。
『ああ、いい人生だった』と。
笑って逝ける様な、そんな人生を送ってくれ。
どうか、どうか。お前のそんな人生のために俺は逝くよ。
落胤の証、青い焔を纏って俺は最高の笑みを遺そう。
「俺の人生だって捨てたもんじゃない。・・・ああ、いい人生だった・・・」

2011/07/23


コメント:
あのね、あのね。今、雪男に超睨まれてます。
あの殺意のみで構成された視線に晒されていると、五分と経たずに死ねそうです。やばいです。
こんなところで悠長にコメントしている場合ではありません。というわけで、管理人はトンずらします。では!!


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