昏い思慕の情が壊れた精神を救う?

遠くから観察を続けていた。
あの遊園地では遊び足らなかった。
兄上の銅像を弟と一緒に壊してしまったので、酷く叱られた。

末の弟のことを考えると、理解できない衝動に駆られる。
・・・よく分からない感情が、生まれた。

虚無界では楽しい時といえば暴虐を尽くしているときだけだった。
『地の王』として眷族を統べることを任されていたが、ほぼ、
自分の愉しみに耽っていた。相手を壊すこと。それだけだったのだ。
ところが兄に呼ばれて、久しぶりに赴いた物質界には末の弟がいた。
虚無界に君臨する魔神、父上の血を継ぎながら物質界に存在する、奥村燐。
他の兄弟達もまた虎視眈々とこの末の弟を狙っているらしい。
兄上は末の弟と遊んでみたくないか?と言った。
物質界の生き物は皆、壊れやすい。
自分が憑依しているから、この身体は壊れてもそれなりに修復が効く。
奥村燐はどうだろうか?
そう思ったら、あの末の弟と遊ぶことで頭が一杯になった。
殴っても壊れないだろうか?
振り回しても壊れないだろうか?
四肢を千切っても修復できるだろうか?
そして、父上の焔と違うのだろうか?
身を焼くあの焔の温度は?
焦がされるこの身と修復の速度とどちらが勝るのか?
考えただけでゾクゾクする。

こみ上げてくる笑いに支配される。
うっとりと正十字学園旧男子寮の一角を見つめた。
明かりの灯った部屋の窓辺に燐の影が映る。
「アレが欲しいな」
呟きは宵闇に紛れて風に浚われていく。
「兄上だけがずるいです。僕もアレが欲しいな」
玩具を欲しがる子供のように燐を見つめる。
壊れにくい人形。生きがいい末の弟。
再び笑いの発作に襲われる。
ああ、末の弟ともっと遊びたい。
めちゃくちゃに壊してみたい。
それでも奥村燐は向かってくるだろうか。
あの凶暴な父上と同じ衝動を宿した瞳で。
お互いを壊しつくして、そして・・・。
「アレ?」
首を傾げる。
力が全てのはずなのに、今、自分は何を思った?
普段感じる破壊衝動とは別の衝動に襲われる。
燐のことを考えるとそれは顕著だ。
屈服させたい、支配したい。
その思いは同じなのに、その衝動は少しずつ形を変えていく。
不思議な気分だ。
「奥村燐が欲しいなぁ」
ああ、あの末の弟の全てが欲しい。

2011/06/05

コメント:
アマ燐は恋人未満。・・・恋人未満どころの話じゃない。日常の方に置こうかと思ったけど、あまりに非日常なので(笑)アマイモンに日常は似合わんってことか。
気を失うまで殴りつけて、服を裂いて想うさま揺さぶりたい・・・とか考えて、
じっと602号室の明かりを見つめる、アマイモンが目に浮かぶ。
口寂しいから飴を頬張って・・・。
「早く気付けよ、大事にしたいんだろ?」と言ってやりたくなりますな。

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