彼女の声が聴こえなくなるまで腕の中に抱いていた。
重く閉ざされた瞼に唇を寄せて触れるだけ口付けを落とす。

「好きだ」

言葉にすれば更に深まる彼女への想い。
深く根付いて永遠に縛り付けて欲しい。
この愛しい温もりと離れたくない。
抱き締める腕の力を強めると影を落とす睫が震えた。
(やべっ)
ぎくり、と身体が強張る。
ゆっくりと腕の力を弛めれば、身動いだ肢体が再び規則正しい寝息を取り戻した。
その様子に安堵の息を吐き出し、彼女の栗色の髪を梳く様に頭を撫でる。
彼女は壊れものと同じだ。
力を加減しないと簡単に壊れてしまう。
だから、自分の精一杯の優しさを惜しみなく注ぐ。
こんなに大事にしたいと思える人は他にない。
確かにブラッドの事は大事だが、ブラッドを大事に思う気持ちと彼女を大事に思う気持ちは異なる。
好きと云う感情に種類が在るなんて彼女に出会うまで知らなかった。

「俺、あんたを想うだけで胸がきゅーってなるんだよ」

苦しいんだ、と眠る彼女に訴えて、なだらかな輪郭を指先でなぞる。
ん、と溢れたくぐもった声に心臓が跳ねた。
(ああ、ほんとどうしようもない位好きだ)
愛しさは止め処なく溢れて、思考なんてとっくの昔に駄目に為っている。
彼女が眠りから覚めたら、また何度も想いを伝えよう。
この想いで彼女を殺せる程に。

「愛してる、アリス」





【眠る君に口付け】



(そっと唇に落とした口付けを彼女は知らない)


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