違うのよ、と少女は笑った。
何が違うんだ。
発した声色が棘を孕む。
我ながら大人気ないとは思うが、深く根付いた性分を容易に改められるなら苦労はしない。
隣でぱら、と本のページがめくられる。
その音が妙に室内に響いた。
違うのよ、と少女はもう一度口にする。
本に落とされていた視線がこちらに向けられ、唇が綻ぶ。

「私にはユリウスだけよ」
「っ、おまえはまたそう云う事を」
「あら、本当の事だもの」

くすくす、と悪戯に細められた瞳。
みんな友達よ、と笑う少女の言葉に躊躇いはない。
その言葉は宿るのは真意だ、といい加減揺るがずにいたいのだが、如何せん少女は顔が広い。
しかも、知り合いの殆どが男だと云う部分が何より気に食わないのだ。

「あなたって本当に嫉妬深いわね」
「…、ふん、嫌気が差したのなら他に媚びを売るんだな」
「もう、またそんな事云って」

偏屈な人ね。
呆れを含んだ、しかし柔い声色が耳朶を擽る。
少女は読み掛けの本を閉じ、こちらへと手を伸ばして来た。
す、と作業用の眼鏡を外される。
眼鏡を攫った指先を咎めたが、距離を詰めた少女が不意に落とした唇の感触に二の句を継げられなかった。
絶句する私に気を良くしたのか、彼女はもう一度唇にキスを降らせる。

「しょうがないから、あなたの機嫌が直るまで何処にも行かないわ」





【御機嫌は如何?】



(ユリウス、顔が真っ赤だけど大丈夫?)
(だ、誰のせいだとっ)
(さぁ、判らないわ)
(っ、おまえは本当に性格が悪い…)
(あら、お互い様でしょう?)


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