此処へ来て手に入れた掛け替えの無いもの全てを失ったのに、
俺は自分の手を汚すことが恐かった。
鳥葬、と繰り返す彼女は理不尽な事件に対しての怒りを隠さない。
それは怒りを通り越して憎しみに近く、“正しいこと”を語るいつもの明るさと反比例するように濃い影を落とす。
あんな奴ら許せない、鳥葬にすればいいのよ、と。
その度に俺は不安になって、カワサキなら何と言うだろうとそればかり考えてた。
彼女に神様を教えた彼なら、何を考えて何を告げるだろう。
きっと彼女は気づいていないけれど、カワサキをまだ好きなんだと思う。
もしかしたら恋愛感情以上に好きかもしれない、俺は多分、適わない。
わかっているから傍に居ることしか出来なくて、わかっていたけど何も言わなかった。
彼女のかみさまはきっとずっと代わらない儘在り続けて、到底俺なんかとは比べものにならない。
無意識の中にまで根付いた心を解くすべは知らないから、傍に居るのを選んだのは俺。
笑う彼女はもう居ない、けれど。
「こんなんじゃ、捧げものになりもしないのにな」

そうだ、神は君臨し続ける。
(だから犬を助ける俺は死なないよ、)


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