あの日、少しだけ触れた指先に私は愚かな恋をした

色褪せた世界に貴方は何を託したのか
うつ向いた儘吐き出した音は空気を、やがて鼓膜を震わせる
選ぶ事を僅かにでも許された存在、其れでも貴方は下された審判を享受した
お別れだ、と貴方が余りに綺麗に笑うものだから、私の懺悔は今でも終わらない
悲しみを乗り越えれば見える、そんなものに興味は無いから
綺麗な笑みは貴方にとって別れの挨拶でしか無くても、私には甘い戒めと為った
此の想い朽ちる迄、私は貴方と共に在ろう

(さよならは始まりですよ、残念でしたね)

斜陽の影に揺れる花びら
すり抜けた現実が儚く散る様に私は立ち尽くす事しか出来ない
せめて、せめて空が貴方の瞳の様に澄み切って居たならば泣く事も無いのだろう
空は無慈悲にも泣く事は無く、かと云って晴れ渡りもせずにまばらな雲が時折世界を煮え切れない色合いにする

『例えばさ、例えば俺が死んだら』

陳腐な、例え話にも為らない台詞を吐き出す貴方の声が泣いて居た、其れは何れ程昔の事かも今ではもう定かで無い
強がる肩を抱き寄せ、力の限り抱き締めて居たなら今でも貴方は私の腕の中に存在して居たかも知れない
手を伸ばすと云う行為、縋る事をあの時の私は何故恥じたのか
溶けて消えてしまう事を貴方は何故享受したのか
何故、と口にする事は無かった、答えは判り切って居たのだから
憎いものは何だ、と自らに問う

(ぬるま湯に浸かった様な平穏とやらですかね、其れとも…)

願わくば、と云うには遅過ぎる
望みはたった一つだった
儚くて許し難いものだった

『独りは怖いよ、でも俺は世界に溶けるんだから独りじゃないだろ?』

振り向いた貴方の顔は影に為り、上手く表情を捉える事は出来ず、其れを歯痒く感じながらも安堵する自分が居た

『変だよな、怖いけど何か嬉しいんだ』

本当に貴方は莫迦ですね、と溢した言葉は風に流され掻き消された
瞼を閉じれば浮かぶ貴方の朱色と深い翠が薄れてしまう日が来るのなら、其れが貴方と私の本当の別れなのだろう
見えない風、踏みしめる大地、綻ぶ花、其れ等全てに貴方が在る、とそんな戯言で貴方は私が此の世界を愛するとでも思ったのだろうか
無慈悲を嘆くには貴方の犯した罪は重く、到底償えるものでは無いけれど、貴方がもし「生きたい」と一言私に告げてくれたなら私はきっと…
芽吹いては消えまた芽吹き、過去への悔やみは尽きる事は無い
もう此の腕の中に貴方を抱き締める事は叶わない、親が子にする様に叱る事も愛す事も、何もかももう手遅れなのだ

『約束してくれるか?』

指切りなんて生温い呪縛で私を縛る、貴方は本当に最期迄子供の儘だった

『呼ばないで欲しいんだ、俺の名前』

らしくも無く私は戸惑った
理由を尋ねても返るのは懇願だけで、其の声が徐々に掠れて行き湿り気を帯びるものだから私は小さく溜め息を付き承諾した
ルーク、と其の子供に柔く語り掛ける事も今の私には出来ない
レプリカ、私の罪を象った子供
ろくでなしな親で申し訳無いが、今でも私は子供の為した事とは真逆の事を思い続けて居る、そして此れからも其れは変わらないだろう





【私は万人の命より貴方の手を取りたかった】



(ヲ前ッテ最低ダッ)
(ン?何ヲ今更)






※五十音順駄文

色々間違ってる擬似親子
すみませんでした、次は真面目に書きます


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