強がりも身勝手さも許して


ふわりと風に揺らめいたスカートを彼女は手のひらできつく握り締めた。自分とは異なる月を連想させる金色が煌めいて、彼女の唇がゆっくりと名前を象る。久々に彼女の声を聞いた気がした(いや、実際に最後に彼女の声を聞いたのは随分と前の事だ)。
「電話くれないから忘れられたのかと思ってた」
怒っている様な口振りではなく、彼女は笑ってさえいた。まだ幼さの残る顔立ちで大人びて笑う彼女に感じるのはやるせなさで、また違う回路では(綺麗だな)なんてらしくもない事を思っていたりする。彼女は自分より子供で、小さくて、弱くて、守らなきゃいけないんだ、とそう思っていた。なのに彼女は、子供だけど大人で、小さいけど大きくて、弱いけど強くて、守らなきゃいけないんじゃなくて(唯、俺が勝手に守りたいと願っているだけで)。そろりと彼女に歩み寄り、スカートを握り締めている手のひらを解く。代わりに互いの手のひらを重ね合わせた。軽く身体を引き寄せて、こつんと額と額を合わせる。彼女の瞳が揺らいだ。そして、じわりと潤む。
「ねぇ、キッド」
微かに震える声が風の音に押し負けそうになるのを必死に繋ぎ止めた。周りの音を遮断して、彼女の声だけに集中する。
「ちゃんと私の事覚えて…る?」
「ばーか、忘れる筈ねーだろ」
よりきつく握った手のひらが震えた。それは彼女の強がりからか、それとも俺の身勝手さからか。

(大人びた顔して笑うなよ)



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