フォークきらり


ワーカホリックにでもなるんじゃないですか、とからかいではなく真面目に溢した。すると、案の定一瞬だけ彼は呆けた顔をして、次の瞬間にはくしゃりと笑った。そうかも知れねーな、と。
「働き過ぎですよ、貴方は」
「けど、事件は待っちゃくれない」
「それは判りますが、今の儘ではその内倒れてしまいます。それに…」
さくり、とタルトにフォークを刺す。ふんだんに乗せられたブルーベリーやラズベリーが銀に反射する。
「彼女は強がっているだけで、本当は寂しい思いをしています。私と食事する暇があるなら彼女に会いに行ったらどうです?」
ゆるり、と彼の青い双眸が揺れる。彼にしては珍しく困った様に笑って見せた。
「俺、夜からまた仕事なんだよ」
「なら、それまで一緒に過ごせるじゃないですか」
「まぁ、そうなんだけどよ。ほら、何つーか…」
居心地悪いのか青い双眸が泳ぐ。店内の照明に金の髪が鈍く輝いた。
「何です?歯切れが悪いですね」
「あー、………会うと離れ難くなるだろ?」
「………はい?」
「だーかーらー、アイツに会うと仕事に行きたくなくなるんだよっ」
自棄と言わんばかりの告白にほんの僅かな時間思考が止まった。彼は手のひらで覆ったが、赤くなった顔を隠し切れてはいない。正直な話、馬鹿らしくて溜め息しか出て来ない。

(何だ、惚気ですか)
(ばっ、ちげえよ!俺は唯…っ)
(つべこべ言わずに会いに行きなさい。じゃないと刺しますよ?)
(うわっ、止めろよ!あっぶねえって!)


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