恋愛相談


「彼は多忙なひとだから、寄り添う事さえ贅沢に思えるわ。重なり合わない時間がふたりの距離を遠ざけて、彼との距離を思い知る度に温もりが薄れて行くの。会いたいって一言口にすれば、きっと彼は困ってしまう。私は彼より子供だから、これは私なりの意地なの。身勝手な我が儘で困らせたくない。彼は女の子の気持ちに鈍いけど勘は鋭いから、悟られない為に私は笑うの。それで、いつか彼に見合う自分になれたら、私はそこで初めて彼に我が儘を言うの。私だけを見て欲しいって」
一度言ってみたいのよね、と彼女は笑った。幼さの残る顔立ちで彼女は大人びて笑う。彼女の語る「彼」より、余程彼女は大人だ。彼と彼女を知る誰もがそう答える自信がある。待つ事に慣れた笑顔は何処か儚くて、けれど彼女の強さが滲む。
「私、待つのは苦痛じゃないわ。でも、それはその先にあるものを信じてるからなの。お兄ちゃんは私を健気だって言うけど、きっと私は誰よりも欲深いのよ」
カップに注がれた紅茶に彼女の細い指先が砂糖を一匙、そして少しのミルクを注いだ。仄かな甘さのミルクティーに口を付けて彼女は笑う。そこにはもう無邪気なひとりの女の子しかいなかった。

(お嬢さん、紅茶と一緒にスコーンは如何でしょう?)
(あら素敵。是非頂くわ)


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