ウイルス




例えば閉じられた瞼の裏側、闇が広がっているのか夢見てるのか、其れを知る由はない。
何を思って空を見上げるのだとか、黙って何を、考えているのだろうとか。
望むことと想うことと行うことと。
すべてをばらばらにこなすことの出来る知能はとても素晴らしく大切で(そう、誤魔化す為にも、とても)、だから奥底を知ることは難し過ぎる。
(特にアンタは、…莫迦だし)

「オレの考えてること、あててみて下さいよ」
「…は?」

素っ頓狂な顔をした“赤い悪魔”は視線をばっちり合わせた儘固まって動かず、ちゃんと考えてるのかそうでないのか。
意味もよくわかってないのかもしれない。
莫迦だから。
(其れに心酔してるオレもオレ、だけど)

「…きーてます?」
「急に何だ」
「敵の思考を読み取るくらいね?」

簡単だろ、のニュアンスを含めて笑うように声を弾ませた。
怪訝そうに眉を潜める其の表情も、オレを見る目も、話をして作業が止まる手も、全部楽しい。
(今アンタが考えてんのは?)(自惚れじゃ無くて、なぁ、オレのことだろ)
何かに対する優越が生まれて広がる、波紋が広がって痺れるように甘く後を引く。

「………お前が敵なら、考えてるのは俺をどうやって仕留めるかだろう」
「…オレなら、こう手首とって、」

銃の握られた儘の手首を掴んで、強く引き寄せる。
傾くこの人に顔を寄せて。

「愛を囁いて仕留めますよ」

アンタのことばっか考えてる、まるでウィルスみたいに頭を侵食して隅々までアンタだらけ。
そうなればいいんだ、アンタも、今だけじゃなくて、ずっと。



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