魅せられる、赤




ふわり、と揺れる赤い髪。

深い深い赤。

『目立つから判り易い』

以前、そう零したら小さく笑まれた。
幼さを感じる笑顔。
“赤い悪魔”には不似合いなそれは何処か脆さが滲んでいて、



抱き締めたいと思った。









ふわり、と揺れる赤い髪。

手を伸ばせば届く距離にある。

無意識だった。
触れたいと言う衝動は自分が思うよりも強かったらしい。

指先に触れる赤。
少し癖があり外に跳ねているので固いのかと思っていたが、指に馴染む感触は柔らかく心地好い。

「クルル?」

触れた相手は戸惑いを含んだ視線を投げ掛けて来た。

「何スか?」

相手が尋ねたい事は判っている。
髪に触れる理由だろう。
でも、尋ねられた所で困る。
「触れたかったから」と言う答えしか持ち得ていないのだから。



何も言わないでくれ。



そんな気持ちを込めて髪を撫でる。
まるで壊れ物を扱うかの様に。
優しく優しく。
自分でも驚く程に。

「髪、…綺麗スね」

内心に留めて置くべきの言葉が、無意識の内に口から滑った。
相手の驚きの表情に自分が余計な事を口走った事に気が付く。

「っ、何、莫迦な事をっ」

心内で舌打ちをしてももう遅い。
相手は耳まで真っ赤にしている。
それを「可愛い」と思う余裕はあるものの、どう取り繕うか、それが頭をぐるぐると駆け巡る。



髪に触れる手を振り払われたく無い。

逃がさない、とでも言う様に…



― 僕ハ君ヲ抱キ締メタ ―



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