逃げる時間もあげません




貴様なんぞ嫌いだ。
彼は少し困った様な、それでいて陰りのない笑顔でそう口にした。
ひとの事をどうこう言える立場じゃないが、彼の素直じゃない、ある意味では非常に素直な言動に軽く頭痛がした。
浮かべる表情とは裏腹なそれが、可愛くないが、腹が立つ位に可愛い。
(っんとに、ムカつく)
突き抜ける様な青空が眩しく、彼の肩越しに輝く太陽はそれの比ではない。
眩しくて眩暈がする。
くらくら、と少しずつだが精神が蝕まれて行くのをやり過ごす為に目を細めた。
狭まった視界は、彼を象る赤がその殆どを占めて、まるで世界に彼しか存在していないんじゃないだろうか、なんて馬鹿げた空想が頭を過ぎる。
確かに馬鹿げているが、心地好い空想。
執着するものは元より少なく、だからこそ一度執着したものには貪欲だ。
(だって、俺はアンタさえいれば呼吸が出来る)
欲しいものを手に入れる為なら、どんな犠牲も厭わない。
―最終的に笑うのは、俺だ。
手を伸ばして彼の手首を掴んだ。
そのまま引き寄せて、粗雑に抱き締める。
抵抗も罵倒も全部ひっくるめて飲み込んでしまえ。

「アンタの分まで俺が好きだから関係ねーよ」

彼は逃げられない。
だって、逃がしてなんかやらない。
死んでも、離しはしない。





【死すらふたりを分かてはしない】



(身勝手な愛で縛り付ける)



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