好きなだけキスして良いなら禁煙します




ずっと傍にいる、だなんて胸糞悪い事を口にする気は更々ない。
永遠なんてものを夢見る程に餓鬼じゃないし、そもそもそんな可愛げのある餓鬼じゃなかった。
触れ合える今があれば良い。
唯、それだけで良い。
例え、明日には彼に銃口を向けられても、この手で彼の息の根を止める事になっても。
「ま、それはそれで贅沢な話だよな」
「…ん?なにか、いったか」
紫煙と共に吐き出した苦笑が、微睡みを彷徨う彼の意識を少しばかり覚醒へと近付けた。
波立つシーツに横たわる肢体が身じろぐ。
上体を起こそうとする彼の肩を軽くベッドに押し付けた。
怪訝そうな表情に笑みを返し、額に貼り付く前髪を指先で払うと、表れた額に口付けを落とす。
「何でもねーよ」
「そうか、なら…いい」
「ああ」
舌足らずに小さく笑む姿は、普段の彼からは想像し難い。
根っからの軍人であるのに、今の彼はまるで無防備な子供の様だ。
自惚れでなく、彼は自分に気を許している。
そんな現状が恨めしくもあり、それ以上に愛しくもある。
この青い星に来て、腑抜けたのは彼ではなく自分の方なのかも知れない。
(ああ、ほんと嫌になっちまう)
苛立ちを誤魔化す様に煙草の先を押し潰す。
枕元に置かれた灰皿から登る名残の煙が天井へと姿を消した。
口寂しくなった、と言い訳じみた事を抜かしながら、今度は頬に口付ける。
額から頬、そして唇に。
軽く音を立てて唇を離すと、彼の微睡みに溶け掛けていた双眸が完璧に現を映していた。
眉間に皺を寄せて、不機嫌さを隠しもせずに一言。

「煙草臭い」

一瞬の沈黙。
しかし、思い掛けない言葉に思わず込み上げた笑いがそれを破った。
くつくつ、と肩を揺らして笑うと、きつく睨み付けられたので、宥める様にまた唇に口付けた。





【永遠よりも今この瞬間が全て】



(些細な戯れだって、ほら、こんなに愛しい)



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