ひとつになれないのなら




ふたつは溶け合う事は出来ない。
年を重ねれば自ずと判る事で、肌越しにしか感じられない体温がもどかしくとも術を知らない。
身体の奥底から湧き上がる欲求は、とても言葉にはならなくて、逃げ場のない感情が肌に這わせた指先を少しばかり粗雑にする。
(違う、僕は君に優しくしたいんだ)
ぶるりと震えた身体を戒める様に唇を噛んだ。
触れていた部分からそっと指先を退け、一度きつく瞼を閉じる。
瞼を開ければ、暗闇に差した仄かな光と共に彼の視線と自分のそれが絡まった。
真っ直ぐ揺るがない眼差しは、彼が戦場に身を投じている間はそれだけでひとを殺めてしまえそうな程に鋭い。
しかし、今はその面影など微塵も感じられない。
柔い光の様だと思う。
慈しみを溶かした優しい光だ、と。

「君はまるで神様みたいだ」
「そんな上等なものとは縁遠い生き方をしてる」

苦笑する彼の頬に指先を伸ばした。
先程より優しく触れる事が出来て、ほっと胸を撫で下ろす。

「君がどんな生き方をしていても構わない」

顔に走る傷痕を指先で撫で、音もなく唇を寄せた。
愛してる、と。





【優しい指先で愛させて】



(君は僕だけの神様だから)



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