残念ながら治療法はありません




輪郭に指先で触れる。
肌越しに伝わる高い体温が心地好く、知らず安堵の溜め息が溢した。
名前を呼ぶ低音に内臓が震えて、じんわりと喉の奥が痺れる。
そのむず痒い感覚が不快ではないのが何より不愉快だった。
指の腹で輪郭をなぞって、ゆっくりと顔に走る傷痕を撫で上げる。
微かに震えた肩と噛んだ唇にほくそ笑み、やがて耳の裏へと指先を滑らせた。
首筋を辿り、形を確かめる様に鎖骨に触れると、無遠慮な指先を制止しようとした熱い手のひらを握り返して逆に自由を奪う。
レンズ越しに相手の視線を捉えて笑えば、僅かに見開かれた双眸がまるで硝子玉の様に自分を映した。
今、彼の目に映るのは自分だけ。
一時の出来事だが揺るがないその事実に込み上げる感情の名を知っている。
知って、しまった。
(知らない儘のが良かったのに)
高い体温を引き寄せて、きつく閉ざされた唇に口付けを落とす。
口付けた拍子に出来た僅かな隙間から舌先を滑り込ませ、相手のそれを軽く撫でれば、案の定奥へと逃げられた。

「逃げられると追いたくなりません?」
「っ、」

一旦唇を離して問い掛けた言葉は、見る見る内に相手の頬を真っ赤に染め上げてしまう。
眉を顰めてきつい視線を向けられたが、はっきり言って迫力の欠片もない。

「んな顔で睨み付けられても逆効果ですよ、せんぱい」





【恋愛末期症状】



(可愛過ぎんだよ、アンタ)


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