僕が僕である為に




ギロロには兄がいて、そのひとがとても大好きで仕方なかった。
歳が離れているのもあるからか、兄はギロロにとって偉大な存在で、家を空ける事が多い父よりも身近な大人の男のひとだった。
父の大きな背中に小さな手のひらは届かなかったが、兄の背中は直ぐそこにあった。
それこそ手を伸ばせば届く距離にあるその背中は、ギロロの目には父の背中に負けず劣らず大きく映った。
頭を撫でてくれる大きく温かな手が、ギロロは好きだった。
その手と自分の手を繋いで歩く帰り道が好きだった。
沈む夕日に染まる茜空が好きだった。

「ギロロの髪はまるで夕日みたいだな」

茜空の下、兄が口にした事をギロロは今でも忘れられない。
大好きな兄の言葉をギロロは忘れた事はなかった。
どんなに時が流れても、きっとその言葉だけは忘れはしないだろう。
両手がどんなに罪に染まっても、赤い悪魔と畏怖を抱かれても、赤い髪を血の様だと皮肉られても、ギロロは兄の言葉を忘れない。

「夕日みたいでとても綺麗だ」

そう穏やかに笑った兄の言葉を今もギロロは、。





【貴方がくれた言葉】



(揺らぐ事のない様に支えてくれる、それはまるで魔法の様な)



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