「       」




傷だらけの身体を引き摺りながらも、彼の射抜く様な視線は揺らぐ事を知らない。
(向けられた銃口に高揚感すら覚えた)

ローリーの荷台に揺られながら、彼の血を彷彿させる赤い髪が風に遊ばれる様を見詰めた。
彼はひとと触れ合うのが苦手らしく、俺と距離を置いて荷台の角で膝を抱えている。
俺はそれを不快には思わなかったし、逆に彼を観察し易いと無遠慮な視線を投げていた。
伸びた前髪に隠れがちな顔の傷痕が、吹く風によって時折その全貌を露わにする。
深く刻まれたそれは赤い髪と同様で目を引き、ふたつが合わさる事によって更にその効果を増していた。
こちらの無遠慮な視線に堪えかねたのか、彼に訝しげな視線を返される。

「赤い髪は珍しいし、顔の傷も目を引いて仕方ない。だから見てた」
「………まだ何も言っていない」
「けど、そう言う事だろ?」

喉を震わせて笑えば、彼は不満げに口を噤んだ。
俯く彼とは反して空を仰ぐ。
頭上に広がる青は何処までも果てしなく続いているかの様で息苦しい。
それを誤魔化すかの様に上着から取り出した煙草に火を点け、有害な煙を肺に送り込む。
肺を満たした煙をゆっくり吐き出すと、彼は口元を押さえ、ごほ、と咳き込んだ。

「悪い、煙かったかい?」

彼は小さく頭を振り、徐に口を開いた。

「俺の兄も煙草を吸うひとだった」
「だった?」
「もう何年も会っていない」
「ふーん、」

煙草の灰が風に浚われる。
その行く先を目で追ったが、直ぐ様行方は知れなくなった。
もう一度深く煙を吸い込み、まだ火を点けたばかりの煙草を指先で摘んで荷台の外へと放る。
彼は咎める様な視線を送って来たが、気にせず自分の羽織っていた上着を脱ぎ、頭から被せる様に彼へと投げた。

「っ、何す…」
「もう直ぐ到着だ。アンタは目立ち過ぎるからフードをしっかり被ってくれ」
「………了解した」

不服ながらも頷く様が面白くて笑いを誘われれば、彼の眉間に深く皺が刻まれた。



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