相容れない僕等




二度とその重く閉ざされた瞼が開く事はないのではないか、と思う程に彼は深い眠りを貪っていた。
普段眠りの浅い彼にとってそれはとても珍しい事で、ついまじまじと寝顔に見入ってしまう。
レンズの奥を覗くと目の下にうっすらと隈が浮かんでいた。
懲りもせずにまた徹夜続きで作業に没頭したと言う所だろう。
呆れて溜め息すら出ない。
せめても、と薄手のタオルケットをかけてやり、眠る彼の傍らに腰を下ろす。
ふわふわと揺れる黄色い髪が、まるで触れられるのを待っている様な錯覚に陥り、無意識下で指先を伸ばした。
柔らかな触り心地が好ましく、何度も指で髪を梳いてしまう。
小さな寝息が規則正しく刻まれる度、このおとこもちゃんと生きているんだな、なんて当たり前の事を思ったりした。
当たり前の事なのに改めて目の当たりにすると少し不思議な感じがする。
(何故、だろうな)
自分と比べて極めて低いが体温がある。
不健康な色の肌の下には同じ色の血が流れている。
だが、俺達は余りに相容れない。
理解し合えない部分が多過ぎて、同じである部分を見落としてしまっている。
故に彼を自分とは違うものと認識しまっているのかも知れない。
彼に生を感じる事を不思議に思う程。

「何だか、損してる気分だ」





【もっと近くで君を感じられる筈なのに】



(指先に髪を絡ませながら呟いた言葉は、眠る彼には届かずに朽ちた)



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