ボクにとってのアナタと言う存在




ボクの目にアナタはとても大きく映っています。
アナタはボクの憧れのひとが背中を預けられるひとだから。
アナタを大きく感じるのは、ボクが未だ同等には程遠いからだ、と知っています。
けど、頭で理解していても感情が付いて行かない。
ボクはアナタが妬ましいんです。
憧れのひと、軍曹さんはボクに優しいし、ちゃんとボクをボクとして見てくれる。
けど、軍曹さんがアナタを見る目はもっと特別な色が含まれている。
優しい、とは違う他の何かがそこにはあるんです。
未熟だからか、子供だからか、それが何なのかボクには判らない。
(違う、本当は判ってる)

「伍長さん」
「ん、何だ?」
「ボクは、ボクは伍長さんみたいになりたい訳じゃないんです」
「は?」

銃を磨いていた手が止まり、吊り気味の瞳が瞬く。
ぽかん、と口を開ける彼は、普段よりも幼く見えた。
その双眸に映る自分が酷くちっぽけに見えて、ボクの中で仄暗い感情が渦巻く。
ボクはアナタが妬ましい。
(ああ、何処までボクを醜悪にする気なんですか、伍長さん)
ふつふつ、と湧き上がる感情の醜さが眩暈を呼ぶ。
自分の姿を見たくなくて彼から目を背けた。
目の奥が熱を持ち始める。
泣きたい。
けど、泣いたら駄目だ。

「唯、伍長さんの立つ場所まで登り詰めれば、軍曹さんはボクに背中を預けてくれるんじゃないかって。それだけ、それだけです」

真っ直ぐに彼を見て言えたら良かった。
いつかアナタを追い抜いて見せます、と彼の目を見て言えたら良かった。
逸らした視線が口惜しくて、情けなくて、それを誤魔化す様に唇を噛み締める。
暫しの沈黙の後、彼が動いた気配がした。
名前を呼ばれる。
そして、頭にぽん、と手のひらが乗せられた。

「お前は強いな」
「っ!違っ、ボクはっ」
「お前は、強いよ」

柔い低音が痛い。
優しい手のひらが痛い。
ボクは込み上げる涙を我慢する事が出来ませんでした。





【ボクの中に潜む仄暗い感情はアナタには到底理解出来ないものなのでしょう】



(これ以上ボクを惨めにしないで)



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