演じるのは喜劇か悲劇か


(※人外パロ)



空に溶けてしまいそう。
果てしない青に飲み込まれて、二度と俺の前に姿を見せてはくれない。
きっと、そうだ。
(そうに違いない)

「俺の腕をすり抜けるのは容易な事なんだろ?」

腕の中に閉じ込めた温もりはいつか消えてしまう。
いつか、俺を残して、跡形もなく。
まるで初めから存在しなかったかの様に。

「アンタは酷いな」
「莫迦者、俺は優しいさ」
「ふーん、」
「貴様は判ってない」

紡がれる低音に耳を傾ける。
指先で少し癖のある髪を梳きながら。

「未練なんて断ち切ってしまうに限る」
「………未練、ね」
「夢だと思えば良い、全て」
「アンタ、今、かなり酷い事言ってますよ?」

夢だと思えるなら苦労しない。
出来そうもないから、こんなにも苦しいのに。
(柄じゃないよな、ほんと莫迦みてえ)
自嘲的な笑みを隠す様に腕の力を強める。
今、確かにある温もりが痛かった。

「全部夢だ、いつか忘れてしまうさ」

だから、何を言っても罪にはならない。
続けられた低音が微かに震えていた。
けれど、気付かない振りを、した。

「ほんと酷いひとだよ、アンタは」

梳いていた髪を掴み、顔を上向かせる。
見開いた瞳に俺が、俺だけが映るだけで満たされてしまう自分が可笑しかった。
荒々しく口付ければ、後はもう溢れるだけ。
愛してるじゃ足りないアンタへの想いが、止め処なく溢れるだけ。
(最後まで酷いひとを演じさせてやるから、だから)





【残る時間の全てを俺に頂戴】



(タイムリミットのその時まで)



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