この世界の何処にいても必ず見つけ出してみせるから




畳一畳分の広さしかない部屋には出入りする為のドアが一つあるのみ。
その狭い空間に木製の椅子と灰皿替わりの空き缶、小型のパソコンを持ち込んで数時間。
背凭れを前にして腰掛けた椅子を前へと傾けた。
ぎし、と悲鳴を上げた椅子の足元には今し方まで弄っていたパソコンが放り出されている。
ポケットから取り出した煙草に火を点け、煙を肺いっぱいに吸い込めば頭の芯が薄い膜に覆われるてぼやける様な、酷く冴え渡る様な感覚に襲われた。
吐き出した煙は白い壁にぶつかって部屋中に散らばる。
不意のノック音に間延びした返事を返すと、煙の向こう側で白いドアが開かれた。
そして、視界に飛び込む赤。

「お、せんぱい」
「こんな場所で何をやっとるんだ、貴様は」
「んー、引き籠もり体験?」

そう茶化せば、呆れた表情と溜め息が返った。
眉間に寄せられた皺を指先で伸ばしてからかってやりたくなる。

「そんな体験せずとも、充分引き籠もりだろうが」
「そりゃごもっとも」

喉を鳴らして笑うと、加えていた煙草を指先で攫われる。
ついでに灰皿替わりの空き缶も奪われる。
煙たい、と怪訝な顔で煙草を空き缶の中に放られた。

「換気もロクに出来ない場所で煙草を吸うな」
「はいはい」
「と言うか、何なんだこの部屋は」
「物置とかじゃないすかね、多分」
「多分って、基地内は貴様が好きに設計したんじゃないのか?」
「んな一々基本から考えんのは面倒だったんで、一応軍の基地施設を基に設計したんすよ」

後は個々の要望に応えて内部を弄った位だ。
特にこのひとの要望には、無理難題を突き付けられても応えようと思った。
(若かったねー、俺も)
内心苦笑しながら椅子の傾きを直す。
持ち上がっていた二本の脚が着地し、僅かに軋んだ。

「今度、うちの隊長殿の反省部屋として使ってみたらどーだい?」
「…ふむ、」
「この狭さで、飯も何も与えなかったら効果覿面だろ」
「そうだな、名案かも知れん」

ふ、と空気が微かに振動した。
浮かべられた微笑に思わず魅入る。
(やっぱ、このひとは質悪いよなー)
俺がそんな事を思っているだなんて気付きもしない鈍さがもどかしくて、この後どうからかってやるかを模索した。





【取り敢えずは口付けて、それから】



(つーか、何で俺がここにいるって判ったんすか)
(勘だ)
(………)
(何だ、どうした?)
(せんぱいって案外俺の事愛してますよね)
(なっ、ば、莫迦者っ)



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