淡紅の口付け


(※妖狐パロ)



はらはら、散る桜を嘆く様に、その小さな手のひらは風に舞う花びらを受け止める。
淡紅色に覆われた地に浮かび上がる、深い赤色。
あどけなさの残る顔立ちを悲愴に歪め、手のひらの花びらを包む様に握る。
風が木々を揺らしたかと思えば、花びらが一片、噛み締めた唇に触れた。
その微かな口付けに瞼を閉じる。

「そこで目を閉じるのは、少し思わせ振り過ぎやしないかい?」
「…っ?だ、れだ」

ぱち、と音を立てて瞼を開いた。
不意に落とされた声の方を振り向くと、そこにはひとりのおとこが立っていた。
淡紅色の中、その風景に溶け込む様に佇む、黄色い影。
気配もなく、まるで始めからそこにあったかの様に笑うおとこに対して、向かい合う形で身構えた。
はらはら、と舞う花びら越しにおとこは笑い掛けて来る。
その口元を楽しげに歪めて、おとこは言った。

「桜が散るのが悲しいのかい?それとも、その根の下に眠るものへの哀れみってとこか」
「!…貴様には判るのか」
「ああ、難儀なもんだねぇ」

おとこの手のひらが迫り、視界を覆われる。
ぎくり、と身体が強張ったのと同時に、耳元でおとこの囁きを聴いた。

「その力、喰らってやろうか?」





【花笑みの頃に】



(見えては為らないものを映すこの瞳が、貴様を呼び寄せたと云うのなら、きっと)



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