僕等は世界に足を踏み入れる


(※逃亡者パロ)



「さーてと、ね、何処行きたい?」

暖かいとこも良いけど、我輩意外と寒いとこも良いと思ったりしてるんだよねー。
真っ白なさ、銀世界って言うの?
ほら、住むのは大変そうだけど、体感するのは悪くないかなって。
不機嫌そうに眉間に皺を寄せた幼馴染みにへらり、と笑い掛ける。

「ギロロの好きなとこで良いよ、何処だって良い」

本当だよ、と笑みを深める。
それに比例して幼馴染みの眉間の皺も深まった。

「ケロロ、お前は本当に逃げ切れると思っているのか?」
「ん?んー、どうなんでありましょうなー」

両手を広げて意味もなく一回転。
頭上に広がる夜空には月も星もない。
暗闇の中に身を潜めて、鼓動はまるで初めて悪巧みをする子供の様に高鳴っていた。
脱獄不可能な監獄の中に閉じ込められていた訳じゃない。
いつだって世界は手を伸ばせば届く距離にあった。
なのに、一歩踏み出す事に躊躇いを感じていた。
植え込まれた理念。
(外の世界では生きて行けない、と幼い頃から頑なに思ってた)
抗い難いそれに蝕まれ続けた希望。
(けど、そんなもの下らないと思うっしょ?)
自由に駆け回る事の出来る両足を持ちながら、ありもしない足枷に繋がれていた。
(だからさ、此処を出ようよ)

「逃げ切れるかどうかは、ギロロのやる気次第って感じ?」
「何?」
「我輩は戻るつもりはないであります、だから、後はギロロのやる気次第」
「………、本当に戻るつもりはないんだな?」

窺う様な瞳に笑い掛ける。
永遠にも感じられる沈黙が流れた。
それを破ったのは、深い溜め息と呆れた声。
幼い頃から馴れ親しんだもの。

「判った、俺も付き合う」
「ありま、良いんでありますか?」
「貴様ひとりで行かせたら、周りに何れだけ迷惑が掛かるか判らんからな」

仕方なくだ、と念を押して顔を背けた幼馴染みにふつふつ、と笑いが込み上げる。

「ふ、」
「っ、な、何を笑って」
「ぷっ、く、あはははははっ」
「ケロロっ」
「ごめ、ごめんって、いやー、我輩ってば愛されちゃってるでありますなー」
「なっ、阿呆か!」
「照れない照れない」
「照れてない!」
「顔が真っ赤でありますよ、ちみー」
「っ、うるっさい!」

煩いのはどっちよ、とわざとらしく耳を塞いだ。
高鳴った儘の鼓動が妙に擽ったい。
(ああ、ほんっと、小さい頃からギロロは俺に甘いんだから)
騒がし過ぎる逃亡劇は幕を開けて、僕等は暗闇の中を行く。
一歩一歩、確かな足取りで。





【君とふたり歩いて行こう】



(んでさ、結局行き先どうすんの?)
(知るかっ)



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