退屈だから、と言い訳を




求めてしまうのは餓鬼臭い独占欲なんだと知っていた。
(あのひとの全てを求める)

もし、あのひと全てを手に入れたとして、多分俺は満たされる事はない。
もっともっと、と飽きもせずに求め続けて、あのひとの事で自分が知らない事が存在するのを許せなくなるに違いない。
奥底まで晒け出させて、骨の髄まで喰らい尽くして、それでも足りない、と。
求めて、求めて、何処までもあのひとを欲する。
俺があのひとを求める様にあのひとにも俺を求めて欲しい。
愚かな考えだと理解出来ない訳はないのに、そればかりが思考をぐるぐると廻る。
(イカれてんな)
せんぱい、せんぱい、と繰り返し呼ぶ度に沸き上がる感情は行き場もなく、唯、奥底に根を張る。
いつか、この感情が身動きが取れない程に膨れ上がったなら、きっと。

「せんぱい、俺と一緒に死にませんか」

戯言を紡いで、首に指を這わせて、本能に身を委ねて、その儘。

「それか、俺とアンタ以外の全てを消しちまおうぜ」

なぁ、と笑いながら緩やかに首を絞めれば、あのひとはどんな表現を、どんな言葉を、どんな行動を、俺にくれるんだろうか?
思考をぐるぐる廻る、それは途方もない愚かな空想。
(ああ、ほんっと莫迦みてぇ)
今、ここにあのひとがいないからいけないんだ。
抱き締めて、温もりを感じて、唇に口付ければ、こんな莫迦な事を考えたりしないのに。




【空想の中で殺してしまう前に】



早く早く、帰って来い。
(なぁ、退屈なんだよ、せんぱい)



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