責任逃れは許しません




柔らかい感触が唇を塞いだ。
(その温もりに目眩がした)

背中に感じる温もりが、後ろから抱き締められている事を教えた。
顎を取られ、無理に後ろを向かされる。
唯でさえ苦しい体勢だと言うのに、深く深く口付けられ、酸素を貪られた。
逃がさない、とでも言う様に後頭部に手を添えられ、押さえられる。
口付ける角度を変えられる度に出来る、微かな隙間から小さな吐息が溢れた。
自分のものと認めたくない、鼻に掛かった甘ったるい声と共に。

「ん……っ、ふ」

肌が粟立つ感覚にきつく目を閉じる。
息苦しさに触れる相手の唇に歯を立てた。
瞬間、口内に広がる鉄の味。

「っ、…てぇ」

小さな呻きと同時に解放された唇から、肺に酸素を送り込む。
上下する肩が不様で眉間に熱が集まる。
こんな事で泣きそうな自分が惨めだ。

「莫、迦者…っ、二度とするな、こんな…」
「無理」
「なっ」

手首を取られ、向き合う形にさせられる。
下唇に滲む赤色に目を奪われた。
少し抉れた部分が痛々しく、僅かながらも罪悪感が頭を擡げた。

「噛むなよな」
「じ、自業自得だろうっ」
「痛い」
「知らんっ」

赤い滲みが徐々に広がる。
それから逃れる様に視線を逸らした。

「先輩、痛い」
「っ、」

そろり、と耳朶を這う声。
捕まれた手首は解放され、両の手のひらで頬を包まれる。
かち合う視線。
再び視界を彩る赤。

「先輩、舐めて」
「!?ばっ…」

詰められる距離。
もう幾分もない。

「舐めたら治るから」
「そ、んな訳あるかっ、だったら自分で舐めろ!」
「やだ、楽しくねーだろ」
「!…貴様っ」
「はいはい、うっさいうっさい」
「クル…っ、んんっ」





【傷が癒えるまで口付けて】



(や、止めんかっ)
(先輩、息上がってる)
(っ、うるっさい!)


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