(N+黄)


君は優し過ぎるね、と彼は微笑んだ。そっと鼓膜を撫でてみせる声色の柔らかさが僕には少しだけ痛くて、月を模した髪は眩し過ぎる。目を細めるとああ、と何処か納得したように呟き、彼は不意に右の手のひらで僕の目元を覆った。手のひらから伝う温もりが僕の中にじんわりと染み渡るような、そんな感覚に戸惑う。それでも唐突に与えられた温もりは不快ではなかった。月が怖いんだったね。温もりと共に彼の声が伝い、僕は静かに首を縦に振る。月が怖い。僕を狂わす月が僕は何より怖かった。でも君は怖くないよ。そう告げれば薄闇が晴れ、再び彼の微笑みが顔を出した。
(真昼に輝く月は僕を傷付けはしない)




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