どうせなら、指が首に食い込む感覚で愛してくれたらよかったのに



徐々に気管が細くなるのを感じて、足掻くように背を反った。それでも、低迷して行く思考が愛しい。手のひらで出来るだけ優しく撫でてやりたくなるような、そんな愛しさが胸を占めた。涙が眼球に薄い膜を張り、ぼやける視界が藍色で塗り潰され、伸びた前髪から覗く鋭利な視線を正面から受け止める。首を絞め上げる手のひらの感触に喉が鳴いた。ひゅっ、と僅かな隙間から零れた空気が喉を震わせて、酷く耳障りなそれに口元を歪めると、怪訝そうにおとこが眉根を寄せる。おとこが感情を面に出したのが酷く愉快で、どうした殺らないのか、と挑発めいた視線を投げかけた。鋭く細めた双眸に瞠目が覗く。微かな変化を拾い上げ、相手の手のひらに自分のそれを重ねた。抗いではなく、促すように。
「っ、」
息を詰めたのはどちらだったか。首への圧迫が増し、気管の僅かな隙間も潰された。食い込む指の一本一本がやけに鮮明で、軋む音が脳に直に響く。涙がこめかみを伝うのが判った。ぎりっとおとこの手の甲に爪を立てる。抗いではなく、これはさいごの、。

「   、」










何故、と彼は力なく横たわった儘口を開いた。低音は掠れ、素直に耳に馴染むことはなかったが、その原因が自分であるならそれも愛しい。首に残る手のひらの痕にそっと指先を這わせると、触るな、と拒絶が飛ぶ。先刻まで確かに求められていた筈で、変わり身の早さに感心すら覚えた。
「貴様なぞ、もう要らん」
そう腕で目元を覆い隠し、彼は何かを堪えるように下唇を噛む。手の甲に刻まれた爪痕がじくりと痛んだ。




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