(E+D)


苦痛と恐怖と絶望とを混ぜたら、こんな色になるんだろうか。こんな、夕暮れと夜の狭間のような、底知れぬ深い海のような青色になるのだろうか。ああ、今度ニコフにでも聞いてみるか、なんて考えは、明日になれば忘れてしまってるに違いない。そんなことをぼんやりと考えては、読書に勤しむ彼の前髪を指先で掬った。レンズ越しの視線がこちらを捉える。何、と特に気に留めた様子もない声は以前のものより低く掠れていたが、本質は変わっていないように思う。まぁ、確かに少しばかり硬い、と言うか、壁があるのは感じるが、それでも嘆く程の距離ではない。そう思える自分が鈍いのか、周りが過敏なのか、まぁ、そのどちらとも言えるんだろう。別に何でも、と返すと、そう、と彼は再び本に視線を落とした。前髪に触れる指先はその儘に。
(苦痛と恐怖と絶望が生んだのが、この程度の距離なら軽いんじゃないだろうか)



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