(R+D)


きつく繋いだ筈の手と手は、気が付いたら離れ離れだった。すぐそこまで迫る朝を迎えることが出来ない夜のような、そんな彼の髪の色が哀しい。以前の彼にはなかった脆さがそこにはあって、指先で軽く突いただけで崩れてしまいそうな気さえした。彼が遠くなった。それでいて、近くもなった。彼がボク等との間に線を引いた、それが彼が遠くなったと感じる原因。そして、彼を近くなったと感じるのは、彼が落ちて来たからだ。誰にも汚されないとさえ思わせたそんな彼は、もういない。
「リーニョ、」
以前より低く掠れた声色がボクを呼んで、頭を撫でた手のひらの温もりが変わらない安堵をくれる。変わったこと、変わらないこと。どうしても探してしまう、以前の面影。それと同時に新たな彼を探して、以前の面影が上書きされる度、どうしても高まる胸は何を示すんだろう、なんて。
「これが君の痛みなのかな?」
ボクの頭を撫でるもう一方の手のひらが、彼自身の胸を撫でる。きっと、ボク等が人であるなら心臓があるであろう部分を緩やかに。ああ、ごめんね、判らないよ。
「だって、ボク、忘れちゃったことも忘れちゃうから」
だから、きっと、今の君の泣きそうな顔も忘れてしまう。君は良かった、と笑い、そして、ごめんね、と笑顔を苦痛で歪めた。



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