頭痛の種



随分と詰まらなそうに世界を映す双眸を細めながら、皺の寄った眉間を指先で解し、おとこは深く長い息を吐いた。
「眼球、抉り出してぇ」
頭痛が酷いのだと言う。その眼球を圧迫されるような痛みは吐き気を伴い、食欲すらわかないらしい。あー、だの、うー、だの意味をなさない唸りは、その全てに濁点が付属されているような響きだ。大人しく横になればいいものをと呆れると、「仰向け寝だと頭痛が酷い、かと言ってうつ伏せ寝だと吐き気が増す」とのおとこの言い分に「じゃあ、横向きで寝ればいいだろう」と返したこの口が今更ながらに憎い。おとこは一瞬ぽかんと口を開け、その間抜け面を数拍ほど晒したかと思うと、次の瞬間にはあろうことかひと様の太腿に断りもなく頭を乗せて来たのである。ふたりでおとこが作業中に仮眠をとる為の簡易ベッドの上に腰掛けていた、その時の状況も悪かったとは言え、容易におとこの行動を受け入れる形になったのは情けない。頭の重みを感じているのは太腿だが、これは所謂膝枕と言うものではないか。おとこがおとこに膝枕。頭痛がして来たのは気のせいじゃない。
「…体調を崩しているところ悪いんだが、落としていいか?」
「せんぱい、俺、もうちょっと肉ある方が好みー」
「よーし、今すぐ楽にしてやる」
上を向いている左のこめかみに右肘を乗せ、ぐりぐりと圧を掛けた。ぐえ、だの、うえ、だの、そんな呻きなんぞ知らん。その儘逝ってしまえ、馬鹿者が。

(甘えられ下手、甘え下手)




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