(R+黄)


何処へ行くの。そう尋ねてしまえば、きっと、彼は本当に何処かへ行ってしまう。そんな予感があった。月のように捉えどころのない、そんな彼のことだから、いつか突然いなくなってしまうんじゃないか、と。それこそ月の光に溶けるように。不安とはまた違う、自分でもよく判らない感覚に飲み込まれて行く。ぐらりと世界が揺れるような、足場が不安定な場所に立っているような、そんな感覚が嫌で彼の手のひらを掴んだ。温もりがじわりと伝う。どうしたの、と象られた微笑が綺麗で、誰も彼を汚すことなんて出来ないと思った。何でもないよ、なんて上手く笑えているかも判らなかったけど、ボクは彼の手を引いて走り出す。慌てる様子もなく、彼も地を蹴った。くすくすと彼の笑い声が響く。デートのお誘いですか、なんて。
(そうだよ、だから君はいまからボクと手を離しちゃ駄目なんだ)




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