(K+黄)


あいつと初めて出会ったとき、その瞬間、俺は目の前に月が落ちて来たんだと思った。真っ昼間の、太陽が真上に燦々と輝きを放っている時間帯に月が空から降って来たんだ、と。それを聞いて、あの牛野郎はふるふると小刻みに肩を震わせて「似合わねー、つか、お前って案外ロマンチスト?」と腹を抱えて笑った。所謂、大爆笑。全く持って失礼な奴だ。しかし、まぁ、確かに夢見がちな発言なのは認める。実際に俺はそのとき、木陰に寝転び、片足を夢の中に突っ込んだ状態だったし、更に言うなら、あいつは本当に落ちて来た。照りつける太陽の光を和らげてくれる木の上から。恐らく、落ちて来たと言うより、降りて来た、と表現するのが正しいんだろう。酷く軽やかな着地は猫そのもので、その動作も錯覚を起こす手伝いをしたのかも知れない。申し訳程度に吹く微かな風がふわりと長い髪を撫で、それは木陰だと言うのに輝いていた。投げ出した俺の身体から数歩しか離れていないその場所に、夜を照らす、柔らかな月の光があった。
「…つ、き」
「月?」
無意識に滑り落ちた言葉は、どうやら月(だとそのときの俺は思っていた。寝ぼけていたんだ)に届いたようで、俺の言葉を反芻し、何やら考える素振りで俺を凝視してみせる。そして、徐にこちらに歩を進めて来たかと思うと、何を思ったのか傍らにしゃがみ込んで俺の髪に触れた。
「僕が月なら、君は太陽だね」
月は何処か悪戯な色を孕んで笑った。




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