少しの憧れを孕んだ愛情
少し癖のある赤が揺れる。
瞬きを幾度が繰り返す度に見え隠れする瞳の色はそれと同一のもので、その色に引き寄せられるかの様に互いの距離が狭める。
唇を薄い瞼に寄せた、惟、それだけ。
音もなく触れて、音もなく離れた。
まるで何事もなかったかの様に、静かに。
何の前触れもなかった行為に見開かれた瞳に思わず笑みが溢れる。
(口付けて良いか、と尋ねたならアンタは許してくれたかい?)
朱に染まって行く頬を撫でながら、その問い掛けを口にはしない。
「き、貴様は何を考えて…っ」
「アンタの事」
「なっ…」
「アンタの事ばっか考えてますよ」
そりゃあもう莫迦みたいに。
そう嘲る様に笑いながら、相手の頬を包む様に両手を添えた。
【瞼にキスを、貴方にキスを】
(その思考を埋め尽くさせて)
(今だけは俺だけを想って)
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