(W+黄)


「王は、よく難しい顔をしてるね」
彼の月を模した長い髪がはらりと揺れていた。過去の記憶だ。彼は私にそう言って、笑った。からかう色はなく、ただ、静かな音だったように思う。
「そうですか?」
そうだよ、と彼は頷いてみせる。闇色の双眸が細くなり、まるで彼の瞳は世界に渦巻く全てを見据えているように思えた。それほどまでに穏やかな色をしていた。
「王はものごとの結果だけじゃなく、それに行き着く過程も欲しいひとなんだね」
そうかも知れない。結果だけでは納得出来ないことが世界には多く転がっていて、結果に行き着くまでの過程を欲してしまう。
「どうして判るんです?」
「僕も過程が欲しいからだよ、同じなんだ」
彼と自分が同じものを欲している。酷く不思議な気分になった。彼は自分とは違うものを見ていると思っていたからだ。そう、もっとずっと遠くまで世界を見渡していると思っていた。その闇色で。
「まぁ、僕はただ単に過程がないと詰まらないだけなんだけど」
声が悪戯な色を孕んで、彼は笑みを深めてみせる。ああ、やはり私と彼では見ている世界が違うんだ。安堵と少しの哀しみが胸を撫でた。



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