(W+D)


不意に鼓膜を撫でた音は悲鳴にも似て、孤独が彼を喰らい尽くそうとしているのだと思った。哀しみの青が不安定に揺れる。彼をどうにか世界に繋ぎ止めようと伸ばした手のひらは届かない。指の隙間から零れ落ちる砂のように止め処なく、彼は脆くも崩れ去るしかないのだ、と誰かが笑った気がした。さらさらと風に攫われる彼と言う存在。世界の無情を嘆いたとて、何が変わるでもない。ありもしない心臓が煩い。胸部が締め付けられる感覚に呼吸が荒くなる。
(こんなの、あんまりじゃないです、か)



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