何処にも行かないよ


きらきらとまるで月の雫を降らせるように輝く髪がはらりと揺れ、それと同じくして白のワンピースがふわりと揺れる。彼女は確かにそこにあって、その足は確かに地を踏みしめているのに、容易に風に攫われてしまいそうな気がした。だから、彼女の手首を捕らえた。見開かれた双眸に自分が映り込む。引き寄せた身体は嘘のように軽かった。これなら本当に風に攫われてしまいかねない。そんな馬鹿げたことを思う。手首を捕らえただけでは足らず、その細い身体を腕の中に囲うと、難なく腕が回る身体は、少しでも力を強めたら折れてしまいそうだ。身長差もあって、下の方から名前を呼ぶ声が聞こえる。視線を下ろすと戸惑いを浮かべた表情がそこにあり、どうしようもない愛しさが神経をざわりと撫でた。
「どうしたの、」
「お前がどっか行かないように」

(…お馬鹿さんね、ガサツ君)
(すみませんね、へちゃむくれ)




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