君が夢で笑っていられるように


闇は彼を捕らえて離さない。

レンズの向こう側で闇が不安定に揺らめいた。徐々に細くなり、やがて閉ざされる。瞼に遮られ、闇が姿を隠すと同時に安堵の息を吐いた。深海を思わせる髪を指で軽く梳き、彼と他をとの境界線をそっと外す。瞼を縁取る睫が微かに震え、それでも開かれることのない瞼の向こうで、彼はどんな夢を見るのか。サイドテーブルに眼鏡を置き、額にかかる前髪を払った。おやすみ、と小さく呟いた唇が、今は規則正しい寝息を立てる。彼の見る夢が穏やかであれば良い。せめて、夢だけは彼を蝕むことなく、彼に安らぎを与えるものであれば良い。ブランケットを肩までかけ、ゆるりと細い輪郭をなぞった。
「友よ、良い夢を」

(闇から救い出すことが出来なくとも)



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