涙が枯れた筈もない。
(泣かないと自分を戒めたのは自己の崩壊を防ぐ為の悪足掻きに過ぎない)

大切なものを失って偽る事を覚えた。
感情を真綿でくるんで、じわじわと追い詰める様に殺して行く。
スコープ越しに世界を捉え、指先で引き金を絞る。
生きるとは殺すと云う事。
死ぬとは殺されると云う事。
手が直に汚れない分、汚れは内側に蓄積され、銃口から憎しみとして放出される。
大切なものを奪われた事で憎しみを知り、憎しみを知ったからこそ銃をとった。
ロックオン・ストラトスと云う名の偽りにニール・ディランディと云う真実を隠して、指先がまた引き金を引く。
耳障りな轟音、銃声は脳内に数多の悲鳴を響かせる。
撃ち抜いた獲物が崩れ落ちる様を見詰めながら、存在しない幻覚を見ていた。
もう二度と戻らない、愛しい愛しい過去。
瞼をきつく閉じ、唇を噛み締める。
反芻する悲鳴は愛しい家族のもの。
(在る筈のない、そんなものに飲まれるな)
泣き叫ぶのは幼い自分。
(俺はもう無力な子供の儘じゃない)
ぐっと奥歯を噛み締めて、込み上げる吐き気をやり過ごす。
(力を示せ、前を向け、此の手で世界に変革を)
静かに瞼を開けて次の獲物に照準を合わせた。

「こちとら世界に喧嘩を売ったんだ」

舐めんなよ、と口端を吊り上げて笑う。
引き金を引く指先に躊躇いはなかった。





【憎むべきは不変と云う名の怠惰】



(世界は変わる為の努力を惜しむべきではない)




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