恋して愛した


ふわり、とまるで花が綻ぶ様に彼女は笑った。大人びたものとはまた違う笑顔に息が詰まり、彼女が笑みと共に象った言葉に思考回路が停止する。一瞬の空白の後、彼女の言葉がぶわりと思考を波立たせる様に反芻した。
『愛してる』
自分の中で子供の儘だった彼女が急速に歩を進める。無意識に自分は彼女を甘く見ていたのかも知れない。会えない時間が彼女を成長させるなんて思いもしなかった。以前、親友のひとりに言われた言葉が突き刺さる。
(「子供だと思って甘く見てたら痛い目見る」だの何だのと好き勝手言いやがって、その通りになっちまったじゃねーか、クソっ)
親友に対する筈の悪態は自分に向けたものとなる。どうして自分は彼女を子供だと思うことが出来たんだろう。こんなにも彼女の笑顔や言葉に惑わされていると言うのに。これでは自分の方が彼女よりずっと(ガキみたいだ)。
「ねぇ、キッド」
彼女は月を模した髪をはらりと揺らし、上手く纏められずにいる思考を更に乱しにかかった。微かに頬を染め、照れた様に笑う彼女の双眸が悪戯にくるりと煌めいたのは、気のせいではない(と思いたい)。

(故意でないなら尚質が悪い!)



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