お先に失礼しても宜しいですか?(誰だって命が惜しいよね!)



(※同級生)



間近で見て初めて気が付くこと。
それは黒だと思っていたおとこの髪が深い紫色だと言うこと。
気が付いたときは不思議でならなくて、ついつい無遠慮な視線を投げた。
いつしか癖になったそれを咎めるでもなく、黙々と作業をこなして行く様が面白い。
頬杖を突いて長机に体重を預けると、パイプ椅子がぎしりと軋む。
差し込む西日に象られた放課後は何処か幻想的で、遠くに聞こえる運動部の掛け声なんかが耳に心地好かった。
この儘、心地好さに身を委ねてしまえば、意識が微睡みに飲まれるのも時間の問題かも知れない。
ぼんやりとして来た意識で夕焼けに縁取られた深い紫色を見詰めていると、ぱちんぱちんと小気味良い音が室内に響いた。
我が校の生徒会長殿は書類整理に手早く片を付け、学校の来客用玄関に飾る花を生けている最中だ。
慣れた手付きで花鋏を扱う様は、ある意味生徒会の仕事をこなしているときより活き活きとしている。
(と言うか、何か楽しそうだ)
他人に厳しく自分にも厳しい生徒会長のご趣味は生け花。
似合い過ぎて笑えもしないネタだ。
否、全校生徒が知っているのでネタにもならない。
和服が似合いそうだ、とクラスの女子が騒いでいたし、今年の文化祭で実際に着させようと企んでいるらしく、それについての協力を要請されたのも記憶に新しい。
協力と言っても何をどうしたら良いのか判らないので、取り敢えずは先のことだと考えるのをやめた。
刻まれる一定のリズムにいよいよ本格的に眠気を誘われ始めた頃、低い声色に名を呼ばれた。
はっと意識が覚醒する。
「もう直ぐ終わるから寝るな。風邪を引くぞ」
「あ、…ああ、悪い」
目を幾度か瞬かせていると、おとこが口端を吊り上げてみせたかと思ったら、随分と物騒なことを口にした。
「寝たらお前の首を落としてやるからな」
おとこの手中の花鋏が西日に鈍く煌めいた。

( お ま え が い う と し ゃ れ に な ら な い ! )



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