今日は朝からバケツをひっくり返したかのように酷い雨が降り続いていた。
あまりの酷さから外でサッカーができなくて本当につまんねぇ。
夏になるとこういった雨が多くて本当に嫌んなる。そんな事を考えながら俺は窓に頬杖をついて依然として降り続く雨を眺めていた。
はぁ、自然と溜め息が出る。


『何してるの?』

「なんだ、オマエかよ」


俺は振り返ること無くそう答えた。声だけでなまえだと分かる。
ちらりと声がした方へと視線を向ければ案の定、頬をぷくっと膨らませているなまえがそこにいた。


『なんだ、とは何よう!』


暇そうにしてたから来たのに!そう怒りながらどこか楽しそうに言うなまえ。俺も何だかんだでなまえと話す事が楽しいんだろうな。


『それで晴矢は何してたの?』

「ん、外に出られなくてつまんねぇなーって、」

『…外、行きたいの?』

「まぁな、」


外でなら伸び伸びとサッカーできるからな、と続けて言おうと思っていたのになまえは何か思い付いたのか、その続きを聞くこと無くパタパタとどこかへ行ってしまった。
なんだよ、話振ってきたのは向こうのくせに…。なんだか彼女に話を最後まで聞いてもらえなかったことが少し悔しくて、雨の事も手伝ってか俺はイライラしてきてしまった。
俺は乱暴に窓のカーテンを閉めて雑誌でも読もうと自分の部屋に行こうと動いた時だった。


『晴矢!外行こう、外!』


なまえが合羽を着て俺の前にやってきた。なまえの腕の中にはもう一着の合羽が携えられていた。


「まさかなまえ、俺にその合羽着せる気じゃ…!」

『合羽じゃないよ!レインコートだもん!』

「どっちでも同じだろ!とにかく、そんなダッセェの着たかねぇよ!」

『えぇぇ!昔はよく2人で着て遊びに行ってたじゃん』

「昔のことだろ!」

『そうだけど…』


そう言えばしゅんとしてしまったなまえ。少し悪かったかもしれないと思った俺は仕方が無いから着てやる、と言った。
するとなまえはぱぁっと表情を明るくさせた。それを見てなまえ曰くレインコートがダサイことなんてどうでもよくなった。
現金なヤツだな、なまえも、俺も。


「なんか、やっぱりダサいなガキっぽく見える」

『そんなこと無いよ!ほら、外に行こうよ』


そう言い終わる前になまえは俺の手を引っ張った。
その光景が昔と重なる。

そういえば、昔もよくこんな風になまえに引っ張られてたな…。月日が流れてこんな事もしなくなっちまったけど。


そのせいなのか、昔なら手を握られても何とも思わなかったのに、今はすごくドキドキする。触れている部分から伝わってしまうのではないかという程に。

外に出てみれば先程まで酷い雨が降っていたのにいつの間にかそれが止んでいた。


「雨、止んでるな」

『そうだね、夏の雨っていきなり止んじゃう事あるから…』

「レインコート着た意味ねぇじゃん」

『そんなこと………あっ虹!』


虹を指差してはしゃぐなまえ。レインコートを着ているからかその様子が幼く見えて、昔と重なる。


『わたしが外に行こうって言ったから見られたんだよね!』


にこりとなまえは昔と変わらない笑顔を俺に向ける。
そうだ、俺はいつからかこの笑顔に惹かれるようになったんだ。


『晴矢!せっかくだからサッカーしようよ!』

「あぁ!」


先に進みたいとも思うけど、今はまだこのままでも良いと思う。だってまだ俺たちはレインコートが似合う幼い子どもだから。



レインコートなつのあめ









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