疲れた。今日はいろいろと忙しかったから。まず先生に頼まれた書類を運んで、その後に図書室の本の整理を頼まれ、さらに日直の仕事もして……もう体力は残っていなかった。


「なまえ、」


私の名前を呼ぶ声がした。聞きなれた、私の大好きな声。疲れを訴える体を無理矢理起こし、私は声の主を振り返る。


『晴矢…!』


アンバランスに巻かれたズボンに、真っ赤な髪の毛。南雲晴矢その人だ。晴矢は柔らかい笑みを浮かべこちらに歩みよってくる。


「疲れた顔してんな」

『うん、今日はちょっと忙しかったんだ』

「そうか。お疲れ」


ぽんぽんと優しく頭を撫でられ、私は目を細める。晴矢の声が、手の温もりが、心をくすぐる。いつもの意地悪な晴矢とは違う、私だけが知っている一面。


『晴矢、』

「ん?なんだ?」

『大好き』

「!っ……俺も、その、大好き…だ」


真っ赤になって言う晴矢に胸がきゅんとする。私は思わず晴矢に飛び付いた。


「うわっ!」


突然の事に驚きながらも、晴矢は私を受け止めてくれる。触れ合った体が温かい。すりっと晴矢が私の首筋に顔を埋めてきた。


『晴矢?』

「あったかいな」

『うん、そうだね』

「……好きだなまえ」

『うん、』


晴矢の声が耳朶を打ち、たったそれだけで、疲れが吹き飛んで行くような気がした。



ガソリンはきみのこえ









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