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計算外の行動

 彼女の名前は結構、いやだいぶ天然が入っている。悪く言っちゃえば頭はあまりよろしくない。なにもないところで転ぶなんて当たり前、ちょっと目を離した隙に知らない人に声を掛けられて連れて行かれそうになるし、任務でのミスも当たり前……我ながら彼氏というより保護者の気分だ。

「佐疫〜! 頼まれた弾丸買ってきたよ!」
「有難う。ごめんねわざわざ」
「気にしないで、わたしも買い物とかしたかったし」

 ふにゃりと笑って、買い物袋から名前は俺が頼んでおいた銃の弾丸が入った箱を差し出す。今日は彼女の任務が休暇らしくショッピングついでに買って来て欲しいものある? と聞かれたので贔屓にしている店で弾丸を買って来て欲しいと頼んでいた。写真も渡しておいたので多分間違えずに買ってきてくれているはずだろう。
 買い物袋を漁って目的のものを目に入れた瞬間、思わず発してしまった、

「……え」

 ……えっと、俺ちゃんと写真見せたよね、お店の場所も説明しておいたし、彼女の友人にも一応言っておいたから大丈夫だと思っていたんだけど、甘かったらしい。
きょとんとした顔で俺を見る名前を一瞥して、震える声で問い掛ける。

「えと、これは?」
「あのね、佐疫が言っていたお店臨時休業していたから、代わりにコレ買ってきたんだよ〜」

 僕が手に持っているのは、小さい子がよく使っているおもちゃの拳銃に補充する弾、つまりBB弾。ああ頭が痛い。
天然って恐い、今更そんなこと実感したって遅いけど。けど、まあなんとなくこうなるだろうなと予想していた自分もいる。

「そ、そっか。有難う」
「これで怪異もあまり怪我しないですむね」
「うん、そだね……」

 天然にも程があるぞ名前。眩暈で倒れそうになるのを押さえてニコニコ笑顔の彼女の頭を撫でてみればパァッと表情を誇らばせて抱き付いてきた。
他の人たちよりも発育が良い胸が当たってちょっとだけ理性が揺れ動く、耐えろ、耐えるんだ佐疫。

「そうそう、あとコレも買ってきたんだ!」
「ん?」

 BB弾は後で寺子屋にいる子ども達にあげよう。腕の中にいる名前が身体を離れて持っている鞄から大きめのなにかを取り出した。なんだろう、目の前に差し出されたから顔を近付けて見た瞬間噴き出した。

「はっ、こ、これって、え!?」
「可愛いでしょ〜、これって今日は夜更かししようって意味でしょ?」
「〜……」

 今度こそ頭が痛い、名前が差し出してきた部分には大きくYESと書かれている、もしかしてと思って裏を見ればそこにはでかでかとNOの文字。これってこの前テレビで見た「YES/NO枕」じゃないか。しかも買ってきた本人は意味理解してないし。

「友達になにか言われなかった?」
「なんかね、大胆だね! って言われたけど……夜更かしって大胆?」
「……」

 もうなんつーか、純粋無垢って怖い。これは本人に真実を伝えた方が良いのかな……頭を悩まされている間にも名前はきょとんとした顔で「佐疫〜? 今日使う?」なんて聞いてきてるし、俺自我保てる自信無いんだけど。

「佐疫? どうしたの?」
「なんでもないよ。……うん」

 説明した方が良いのだろうか、じゃなきゃこの子多分こんなの買ったよ〜ってみんなに言いふらすだろう、斬島辺りなら大丈夫だと思うけど木舌とかに見せられたら色々面倒だ。談話室から出るために名前の手を取って部屋を後にする。

「佐疫〜?」
「一回俺の部屋行こうか」
「うん! わたし佐疫に抱きつきたいな」

 照れる様子もなく言い放つ名前。純粋無垢な笑顔に下心が密かにある俺が恥ずかしくなってくる。早足で自室に入れれば特に緊張するわけも無く普通にベッドに座りだす、ほんともう、危機感ない。

「佐疫〜、ぎゅってして〜」
「うん……」
「わーい」

 小動物みたいにベッドの上で上下に跳ねる名前を抱き締めれば、嬉しそうに擦り寄る名前。一回り小さい名前の身体は熱を帯びて暖かいし、妙に柔らかいし良い匂いがする……いや、耐えろ、耐えるんだ。
まだこの子は清く純粋な女の子だ、俺の勝手な下心で汚すわけにはいかない。悶々と一人でそんなことを考えていると、腕の中の名前がポツリと言葉を紡ぐ。

「やっぱり、佐疫って優しいよね」
「どういうこと?」
「だってわたしが我儘言っても、笑ってその通りにしてくれるんだよ!」
「……」
「わたし昔から馬鹿でドジだから、たくさんの人に馬鹿にされたりしてたんだよ、けど佐疫と出会ってわたしが馬鹿なことしても笑って慰めてくれる佐疫が大好きなの」
「名前……」
「そんな佐疫が大好きだよ!」

 くだけた笑顔で笑いかける名前がたまらなく愛おしくなって、思わずその柔らかい唇にキスをすれば彼女は目を見開いてかたまる。思えば、キスをするのって初めてかも知れない、今まではスキンシップ程度に頬や手にはしてきたけど。触れるだけのキスを終えて顔をあげれば、きょとんとした表情の名前が俺を見る。

「佐疫……?」
「ごめん、……俺」
「なんで謝るの? すっごく嬉しいよ! 佐疫にちゅーして欲しいな、なんて思ってたし」
「え、ええ?」
「好きな人とちゅーするのがずっと夢だったんだ! 有難うね佐疫!」
「う、うん」

 天然というか、なんというか……。ここまで来ると思わず感心してしまう。けど、それがきっと名前の良い所なのだろう。

「ねえねえ、今夜これ使って寝ようね!」
「え!?」
「……やなの?」

 目の前に差し出された先ほどのYES/NO枕、思わず一歩後ずさってしまった。待って、俺大丈夫かな、持つかな色々と。目を潤ませて俺を見上げる名前、ゴクリと生唾を飲み込んで、大きく深呼吸をする。

「分かったよ、……使って良いよ」
「やったー! やっぱり佐疫大好き!」

 天然の行動はいつだって予測不可能、だけど俺はそんな名前が大好きだから俺も結構大概なのかもしれない。







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ろか様リクエスト、天然な夢主と佐疫の甘々夢でした。佐疫が軽く変態じみて申し訳ないです。甘々とは言いがたいものになってしまいました……。私の学校にも天然いました、正直あの時は普通に天然だと思っていましたが今考えれば養殖っぽかったような気がします。天然は恐いです。
お気に召さなかったらお申し付け下さい。
ろか様のみお持ち帰りください。この度はリクエスト有り難うございました。

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