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嫉妬の治しかた

屋敷には救護班と言うものが存在しており、アタシは救護係の一人だ。主に怪我をして帰ってきた獄卒達の軽い手当てや救急用具を手渡したりする仕事、まあ基本獄卒達は再生するから待てば良いのだけれどすぐに再生を要する場合はアタシ達の出番となる。
 今日も救護室で絆創膏の補充を行っているときに、扉が開かれた。

「名前! 手当てしてくれよ!」
「……また怪我したの? 平腹」
「後先考えずに突っ走るからだろ」

 やって来たのは恋人である田噛と、友人の平腹だった。平腹に至っては右腕が取れているし顔も斬り傷だらけ、どうしたらそんな風になるのか、ああ後先考えに突進してってやられたわけなのね、馬鹿だ。

「仕方ないなぁ、今道具も多くないから必要最低限しかやらないわよ」
「えー」
「うるさい。ほら取れた右腕は?」
「おら」

 右腕は田噛が持っていたらしい、道具を持って椅子に座ったと同時に田噛が血塗れの右腕をこちらに投げてきたのでそれを受け取って傷口を見る。……わあすっぱり綺麗に切れてる、この技術うちに欲しいかも。

「縫ってあげるから、手出して」
「さんきゅー! 縫合は名前は一番上手いよな!」
「おだてたって何も出ないわよ」

 針に糸を通して、千切れた部位同士を合わせて縫って行く。普通の人間なら多分大掛かりなもになると思うけど痛みにほとんど疎いアタシ達にとっては縫合なんて少しだけ痛む程度のもの。麻酔なんてものは存在しない。
皮膚を裂いて糸を通していくたびにくっついた部分がじわじわと再生していく、平腹は常人よりも回復が早い。

「めんどうだから適当で良いだろ」
「アンタって奴は……、一応アタシ救護班よ」
「ほとんど仕事ねーくせに」
「図星は付かれると痛い」

 ほとんど自然に再生を獄卒達ばかりだから、正直救護班の居る意味なんてほぼ皆無だ。まあその分道具などは念入りに手入れしている、あとはお喋りとか……。あれ、碌な仕事が無いな、呆れてしまう。苦笑交じりにしながらも長年のプロの技はいつも通り発揮される。気が付けば縫合は終わっていたので鋏で糸を切って針を水が張った入れ物につける。

「ほら出来た」
「おおおおおすっげー! あんがとな!」
「分かったから抱き付くな!」

 誰コレ構わず抱きつく平腹の頭を叩けば、後ろでかなり不機嫌そうな田噛。あちゃー、かなり怒ってるかも。しがみ付く平腹を引き離せば盛大に舌打ちをかました田噛は平腹の首根っこを掴む。

「おい、さっさと帰るぞ」
「えー、まだ名前といたいんだけど!」
「黙れ。つうか調子乗ると殴ンぞ」
「ちぇっ、じゃあオレ先帰ってるからな」

 唇を尖らして平腹は縫合し終わった右腕を動かして救護室を出て行く。ていうか一緒に帰れば良いのに……はあと重たいため息を零せばそれが田噛にも聞こえていたらしくまた舌打ちをしたと思ったら救護室の扉の鍵を閉めた。え?

「は? 田噛なにして」
「お前も無防備すぎんだよ、警戒心持て」
「別に平腹くらいなら、うわあ!」

 友人だし、構わないと言い終える前に田噛が私の腕を乱暴に引っ掴んでベッドに放り出す。ぼふんとベッドの上にバウンドして軽く舌を噛みそうになる。ていうかナース服皺になる。「ちょっと、」と文句を言い終える前に田噛が馬乗りになり唇に噛みつかれた。

「!?」
「……そこらへんが危機感ねーんだよ」
「あっ、んっ……!」

 舌が入り込んできて口内で好き勝手に暴れ出した、両耳を塞がれて唾液が交わる音が脳内に響き渡って妙な気分に駆られる、やばい、身体が熱くなって来た。声にならない声が洩れ出て力が出ない。

「ふっ、んっ」
「はぁっ……、脱がすぞ」
「は、ちょっと待て!」

 気持ちよさでほだされそうになったが、田噛の言葉で我に返る。ナース服に手を掛けそうにしている田噛の制して息を乱す。というかここ救護室だし、さらにアタシまだ勤務時間中だし。こんな場所でやられたらいつ人が来るかも分からないし色々問題がある。

「ここ、救護室だから」
「鍵閉めただろ」
「ていうかアタシ今仕事中」
「どうせ仕事ねーだろ」
「うぐっ」

 そこをつかれると困る。確かに今日も平腹が来なかったら一日道具の補充とか書類整理するくらいだったし……、けど、場所を考えると……しごろもどろになりながら田噛を見れば妙にギラついていて正直引いてくれそうにない。

「場所が違ってお前も興奮してんだろ?」
「そ、いうわけじゃっ……んんっ」
「身体熱くしてるくせに」

 ボタンを外されて、首元に顔を埋められた。熱い舌が這って背筋がぞくぞくするし声が洩れる。震える手で田噛の首に腕を回せばそのままスカートの中に手を入れられる。タイツ越しから太ももから内腿を撫でられて下腹部が熱くなる、やばい、変な感覚。

「うっ、あ……」
「つうか、お前平腹とあんま仲良くすんな」
「え、んっ」

 拗ねた口調で言葉を投げ掛けられるのに反応したいけど、スカートの中で動く田噛の手で頭の中がぐちゃぐちゃ状態。目線で訴えかければムスッとした表情で田噛はアタシの首筋に噛みつく。

「ちょ、っ……」

 跡つけないで、と言い終える前にじりっと首筋の一点に熱が入った。場所も多分微妙な位置だろう、明日は一日中髪の毛降ろさないと……ぼんやりと田噛の抱き締めて考えているとまた唇に喰らいつかれた。

「っ」
「ふ、っ……」

 唾液の音が響いて、聴かれてるんじゃないかっていう感覚が脳を支配する、それと同時に誰か来るかも知れないという考えのせいで妙にアタシ自身も興奮してる、あれこんな性格だったっけ。
唾液を舐め取った田噛は荒い呼吸を吐いてアタシを見つめる。拗ねてる、ああこれは多分嫉妬なんだろうな。

「なに、やきもち?」
「……っせ。言っとくけど、一回じゃ終わらせないからな」
「動けなくなったら責任取ってよね」

 こりゃ後で怒られるかもな。けど今は田噛とこうしていたい、言葉に出す前にアタシ自身も田噛の制服に手を伸ばした。






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この様リクエスト、平腹に嫉妬する田噛でした。平腹の脅威の当て馬率。
ナースな夢主と田噛という案はリクエストを貰った時点で思いついたのでその設定で生かせて貰いました。この後忘れ物をした平腹が戻ってきても面白そうですね(笑。
お気に召さなかったらお申し付け下さい。
この様のみお持ち帰りください。この度はリクエスト有り難うございました

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