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「リヴ、キミに質問なのだが…弟子の1号と2号とでは、血の味に違いはあるのかい?」



話題に上がった血とは違う澄んだ赤い紅茶を優雅に揺らすゴールドの正面で、突然の話題に、リヴは同じカップを持ったままキョトリと目を瞬かせていた。



「…え、何?さらりと僕、今凄いピンチ?」



そんなリヴに対して、「2」と書かれた服の審判はゴールドの横で、「1」と書かれた服の審判はリヴの横で、お互い鏡映しにしたかのように、揃って引き攣った笑みを浮かべていた



「…突然なに言い出すんですか親分」



2号はそろりと椅子ごと身を引き、リヴの横に座っていた1号は警戒してか、リヴを抱き寄せながら怪訝そうにゴールドを見たが、ゴールドは特に気にした様子もなく、楽しげに会話を続けていた。



「なに、平等なジャッジをする身として、弟子たちそのものの中身まで公平な存在であるかどうかは、気になる所だからねぇ。」


『…他の審判の血は、まだ飲んだ事ないから分からないよ』


「おや?今までに飲んだことはないのかい?」


『うん。飲もうとしたことはあるけど…途中で審判に止められたから』



あの時は、審判小僧が何人もいる事を知らなくて、おまけに寝起きでぼんやりとしてた時に出会っていたから、噛みつこうとした時に1号が気づいて止めに入った以来、1号が目を光らせて注意して、止めてに入るようになっていた



『多少違うとは思うけど…飲んでみなきゃ分からないかな?』



ちらりと、合意を求める意味も込めてゴールドの横にいる2号にリヴが視線を向ければ、まるで予想していたかのように、2号は即座に両手をクロスさせて、「×」と、拒否の意を示していた。



「やだ!絶対痛い。好き好んで噛まれに行く1号の気が知れない」


「人をマゾヒストみたいに言わないでくれるかなぁ?!」



速攻で拒否をしながらさらりと2号に毒づかれたことに1号は矛先を変えてそのまま怒っていたが、二人の間に漂うかと思われた不穏な雰囲気は、「それじゃあ」と、違う話題をを切り出したゴールドの発言によって掻き消されていた



「それじゃあ、私の血はどうかね?」


「「親分?!」」


『ゴールドの?』


「同じシェフの料理を食べてはいるが、私のは他と客と違い特別仕様だかね。それに、体調にはいろいろ気を使っているからね」



カップを置いて机に身を乗り出した親分は、指でリヴの唇の下に隠れている鋭い犬歯をなぞるように触れながら、そのままするりとリヴの頬に手を添え、驚いて顔を上げたリヴに、ゴールドは深紅の目を細めてにこりと笑って見せていた。



「私なら、きっと最高の血をキミに与える事が出来るよ?リヴ」


『…私は、―――』



ゴールドと合わせていた目を伏せて、リヴは何かを言いかけていたが、言い出す前に、リヴとゴールドとの間に割って入るように、1号がリヴの頭を抱き寄せた



「ダメ!リヴはボクからじゃなきゃ駄目だから!!ほら、リヴ、そんなに飲みたいなら、ボクから飲んでいいからさ?」



1号がリヴの頭を抱き寄せた事により、曝け出された審判の首筋を目前にして、自然とごくりとリヴの喉が鳴った。けれど、リヴは目を瞑って、やんわりと、審判の胸板を押して離れていた



「リヴ…?」


『…私、人前で飲みたくないの。だから、飲むなら部屋に行きたいかな』



「ねえ、審判?」と、向き合って目の前に居る審判ではなく、振り返った先にいたゴールドの横に居る審判2号に向けてリヴは言っていた。驚愕で揃って目を見開く審判小僧達をよそに、傍観していたゴールドが「ほう」と感嘆の声をあげていた。



「いつから違うと分かっていたのだい?」


『本当は来た時から。なんで服の番号違うのかなーって思ってたけど』


「なるほどねぇ…まだまだ平等な傍観者としてなりきる役は、半人前という訳だな」



ニタニタと笑うゴールドに、呆然とした本当の審判1号は、直ぐにじとりと横から物言いたげにゴールドを見ていたが、『ごちそうさま』と紅茶を飲み終えて席を立つリヴに気づいて、慌てて審判はリヴの傍へと寄っていた。



「それほど、その弟子の血は特別美味いと言う訳かい?」



椅子からそのままふわりと浮いて扉に向かったリヴに向けて、ゴールドが聞けば、丁度追いついて横に立った審判に一度視線を向けてから、リヴはゴールドを見て笑った



『美味しいよ。すっごく。でも、分かったのは血の匂いだけじゃないよ』


「…そうかい」


「ねえ、リヴ!1号がした下手な芝居のボクじゃ拒否してたけど、ボクは血飲まれるの全然平気だし、リヴの事も大好きだからね!!」


『ふふ、ありがとう』



椅子に横座りながらひらひらと手を振りながら笑う本当の2号に、リヴは特に深く気にせず笑って手を振り返して出て行ったが 、最後に出て行った1号は、二人にべっと舌を出して出て行ってしまっていた



「……行っちゃいましたね、親分」


「ちーと、意地悪しすぎたようだなあ」


「いいなあ…1号は。ボクも、早くリヴと出会ってればなあ…」



椅子の背もたれに寄り掛かりながらぼやく2号に、そんな彼を見ながら、ゴールドも手を組んで物思いに更けていた



「(だが、遅かれ早かれ、私達三人が同時に手を差し出して可能性が広がった今も、結局リヴが選んだのはあの弟子だったがな)」



2号にリヴが抱きよせられた時に、ゴールドの横で気が気でない様子でリヴを見ていた1号の顔を思い出して、ゴールドは密かに不敵な笑みを深めていた。



―――――

―――

――



「…ねえ、怒ってる?あんな…試すような事をして」


『お詫びに血を飲ませてくれるっていうなら怒らないよ』


「やっぱり怒ってるじゃないか…」


『…冗談だよ。本当に怒ってないから。それに…こんな事、ゴールドが言い出した事でしょ?』



リヴの個室に来て早々のリヴの問いに、審判は同意の意味を込めての苦笑いを零すだけだった。事実、今朝にゴールドから「ちょっと今日はお前たちの衣装を替えて貰えないか?」と、突拍子もない事を言い出された時から嫌な予感はしていたが、師に逆らう訳にもいかず、結果、今自分の着ている「2」と印字されたシャツを再度見て、審判は深いため息を零していた



『それに、確かめるのはいい事だと思うよ』


「確かめる…?」


『だって…。ほら、審判』



ん。と審判に向けて両手を広げて待つリヴに、審判は首を傾げつつもリヴをそっと抱きしめれば、すりすりと、リヴは甘えるように審判の肩に頭を寄せていた



『こうするのも、好きだとか愛してるとか言うのも…愛を確かめる行為でしょう?不安だから確かめるっていうのは、普通の事だよ』


「そう…かもしれないけど」



許してくれる優しいリヴに甘えて、そのまま素直に納得していいのか分からなくて、歯切れの悪い反応をする審判に、リヴはそんな審判を暫く見つめた後、徐にカプリと、何故か牙をたてずに、軽く審判の首筋に甘噛みしていた。



「っ…リヴ?!」


『…私だって不安だよ。ねえ…審判が演じた2号の言葉。あれは審判の本心なの?』



不安げに揺れるリヴの瞳に審判が映る。すぐに審判の演技を見破ってはいたけれど、演技とはいえ、即座に拒否していた審判の言葉が引っかかっていたらしく、背中にまわされたリヴの手が、縋るようにぎゅっと審判の服を掴んだ事を審判は感じ取っていた。そして同時に、彼女も不安を持っていて、その不安の原因が自分であることに、不安にさせた申し訳なさの他に、それだけ自分を気にしてくれているリヴの気持ちに触れたような暖かさも感じていた。



「あんなの…ジャッジするまでもなく、嘘だよ」


『本当に?』


「そんなに不安なら、ちゃんと親分にジャッジして貰うかい?今は…行かせたく、無いけど」



ついさっきまでいた訓練部屋にまだ残っているであろうゴールドと2号を思い出して、あからさまに不機嫌な口ぶりで、自然と腕の力を強める審判に、リヴは思わず笑って審判を宥めるように抱きしめ返していた



『うん…、私も今はこうしている方がいい。でも、今日はもう訓練はいいの?』


「今日はもうおしまい!今からは、訓練の疲れをリヴで癒す時間。あと、寂しくて僕の様子を見に来たリヴも甘やかしてあげないと、ね?」



いつもの調子に戻って、ご機嫌にリヴの頭を撫でる審判に、「寂しくてじゃない」と、口を尖らせながら恥ずかしさに少しの反発をしていたが、実の所、それも嘘ではないため、ゆっくりと撫でる審判の手を、リヴは拒むことなく心地よさそうに受けていた。しかし、ふと、抱きついていたリヴが何かに気付いた様子で、言いにくそうに審判に声をかけていた。



『あの、さ…』


「んー?なんだい、リヴ」


『その…やっぱり先に着替えて?審判なのは分かってるし、違うの分かるけど…やっぱり服に違和感あるから』



とんとん、と「2」と描かれている服の部分を差しながらリヴが言えば、すっかり忘れていたらしい審判が「ああ」と納得していた。しかし、審判はそれ以上動くことなく、にやりと笑ってリヴを見下ろしていた



「ねぇ、別に着替えなくても、脱げば解決するよね?」


『!!…審判のえっち!それでいい訳ないから!!』



ますます腕の力を緩めずに笑う審判に、真っ赤になったリヴから、とうとう容赦のないストレートパンチが、審判にお見舞いされてしまっていた。けれど、セクハラを制しつつも、そのまま恥ずかしさにリヴが抱き締めている審判の腕を、振り払うことはなかった。

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