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王馬小吉と無理心中


彼の心に私が縋り付くこそしかできないなら私は最期を彼に見届けて欲しいと思った。なんてことない、階段の柵に腰を落としていただけだ。「なになに?死ぬの!?単細胞な君らしい死に方だね」と悪気もなく言う彼はやはり私の愛した彼だった。目と鼻の先に触れた王馬小吉の顔は今から死ぬ人間を前にして表している顔とは到底かけ離れている、「でも俺名字ちゃんが死ぬのは悲しいなー」なんて言った時、口角が歪み、同時に私の身体は、私の意志で呆気なく無重力へと落ちる。ふわり、とスカートとシャツに空気が孕み、長い長い髪の毛が空を踊る。
「え、」
本当に死ぬなんて思ってなかったのかなんなのか、王馬小吉はぽかんとあっけに取られた顔で間抜けな声を出した。と、同時に彼女は今までに見たことがないくらい恍惚と憎悪が入り混じった笑顔を向けた。
その瞬間は、スローモーションのようにゆっくりと流れていたようだ。
我に返ったときは、彼女が伸ばした手が俺の腕を掴み、彼女の力と彼女にのし掛かる重力で、俺の、脚が、身体が、浮いて、あれ?
「王馬くん、だーいすき」
最悪だね。なんて悪態をつく暇もなく、俺のスカーフは意思を持ったようにはためいて、俺と名字ちゃんは、深い深い地獄へとおちていく。

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