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百田くんとイタリア語


夢主は超高校級のサイフォニスト
「百田くん、難しい顔してどした……?」
「おう、本借りたんだが時折英語混じっててよー、短文ならなんとななんだけど長文全く読めなくてな……」
「へえ……見せてもらっていいかな」
「…ほら」
「これイタリア語だね。……えーと、」
「?」
「……「※“自分の幸福と概念と世のすべての人たちの幸福の概念とが、まるで食いちがっているかのような不安、自分はその不安のために夜々、転輾し、呻吟し、発狂しかけた事さえあります。自分は、いったい幸福なのでしょうか。自分は小さい時から、実にしばしば、仕合わせ者だと人に言われて来ましたが、自分ではいつも地獄の思いで、かえって、自分を仕合わせ者だと言ったひとたちのほうが、比較にも何もならぬくらいずっとずっと安楽なように自分には見えるのです”」……文豪小説だね」
「……お、おい……もしかして……」
「サイフォニストの勉強で何回かイタリアには行ったことがあるからね……。割と喋れるんだ」
「おー、そうなのか!ビックリしたぞー、ったくそういうことは早く言えよなー!」
「えー、だって私も百田くんがロシア語と英語喋れるの知らなかったし……」
「あー、それは悪かったな。だが、今度からは隠し事はなしだ。いいな?」
「うん」

※太宰治『人間失格』(p12)

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