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獄都☆光クラブ(ジャイボ)


「……名字」
「どうしましたジャイボくん」

 僕よりも幾分年上で、人間ではない名字。ゼラが妙に構うから気に入らなかったのに、慣れ慣れしく僕に話しかけてくるこいつが嫌いだった。何度か殺そうと試みてもすぐに再生しちゃうし。なんなのコイツ、ほんと気に入らない。気に入らない、はずなのに、傍にいると落ち着くのはなんで。
座っていた名字の背中に寄りかかれば、名字は笑いながら僕の頭を撫でる。

「ジャイボで良いって言ってんじゃん」
「距離を縮めてしまうと別れが悲しくなりますし」
「……ほんとに帰る気なの」
「自分の居場所はここではないですから」
「……」

 唇をぎゅっと噛み締める。話しを聞けば獄卒はたくさんいるらしい。今回のお仕事は名字だけらしいけど。

「寂しいんですか?」
「そんなんじゃないから! きゃはっ、勘違いしないでよね!」

 図星をつかれたから声を荒げて言えば名字は目を細めて笑った。なんなの一体、やっぱり嫌いだ。僕の一番はゼラだ。

「ジャイボくんは、ゼラくんが一番ですもんね」
「そうだよ、そうに決まってるじゃん」
「やっぱり、大切な人の傍にいたいと思いますよね?」
「当たり前じゃん」
「……やはり、人間なんですね」
「きゃはっ、なに言ってるの? 意味分からない」

 細められた目は妙に澄んでいて、ほだされそうだ。

「ジャイボくんと同じように、自分も傍にいたいって思ってる人がいるんです」
「っ!」

 見透かされてる、酷く寂しそうに笑った名字に泣きそうになった。僕は、僕はゼラだけがいれば良いのに……なんで。

「恋人?」
「はい。……とても、大切な人です」
「そう……」

 こんな惨めな思いをさせる名字なんて、殺してやりたい。殺すことは出来るけど、彼女はあっと言う間に生き返ってしまう。

「名字は、ずるい」
「ジャイボくんの倍以上生きてますからね」
「……嫌いだよ」
「うん」

 頬が濡れていく、名字は笑ったまま僕の頬を撫でるだけだった。ゼラ、ゼラ……僕はどうすれば良いの。

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