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- ナノ -

06

「霧谷」
「ん?」

 瀬尾さんに恋愛相談をされた翌日に、家庭教師をしてくれていた霧谷に声を掛けた。もう勉強するところは終わっているから、ちょっとの雑談なら平気だろう。さっきからずっと霧谷もそわそわしていたし、さり気なくこの前言った恋話の結果が気になるのだろう。

「瀬尾さん、霧谷のこと好きって言ってた」
「は!?」
「嘘付いてないよ。それとなく霧谷の好きな人教えてって言われてたし」
「……」

 半信半疑と言う顔だった。けど私は今までこうした真剣な話で嘘や冗談を言ったことが無いからきっと彼は信じてくれるだろう。
持っていたシャーペンを置いて霧谷の方を向けば、顔を真っ赤にしたまま動かない。

「けど、よ」
「うん」
「もうすぐクリスマスじゃん、俺クリスマス前になんとか告白しようと思ってたんだ」
「……」
「そう言われると嘘でもちょっとやる気出る。ありがと」
「嘘じゃないのに……」

 むくれて言えば霧谷は苦笑しつつも私の頭を撫でてくれる。そして自信が湧いたのか、少しだけニヤけながら私の背中に腕を回して強く抱き締めてきた。ぽんぽんと背中を軽く叩かれたと思ったら今度は力強く抱き締められて声が洩れる。

「ちょ、なにっ」
「ありがとな、なんかほんと、俺お前が好きだわ」
「幼馴染の恋応援したいし。願わくば瀬尾さんとこれからもお世話になりたいし」

 気がはえーよ、と首元で霧谷が笑った。つられて笑えば身体を離されてまた頭を撫でられる。
私結構良いことしたのかも知れない。

「うん。俺も頑張るから、お前も頑張れよ」
「もちろん」

 笑顔で言えば、じゃあもう少し勉強頑張るか、と言われて問題数増やされた。



 数日後、朝から凄く寒くて一日家にいると思っていたのも束の間、出かけなければいけいない用を思い出したのでコートにマフラー、手袋を装備して玄関で靴を履いてリビングに向かって叫ぶ。

「模擬試験の申し込み行って来る」
「今日は雪が降ってるから気をつけてね」
「うん」

 クリスマス目前に模擬試験がある。ぎりぎりまで面倒だったら申し込み行かなかった事忘れてて気が付いたら締切り三日前。私は急いで家を出て徒歩十分で行ける書店へと小走りで向かった。
寒かっただけなのに、気がつけばちろちろと真っ白い雪が降っておりコートを着ている身体を抱く。寒い、吐く息も真っ白だ。

「あ」
「……」

 なんてこったい。思わず呟いた。書店への道のりは家を出て真っ直ぐ歩いて道路を渡ればすぐなのだけど、その道路脇に見た事がある人が突っ立っていた。軍服に、腰に刀、帽子を被っていて顔は分からないけど遠目からでも青っぽい瞳は見えた。なんだっけ、名前、キリハラ? キリヤマ? えっと、

「キリシマさん」

 私が吐き出した言葉が彼にも聞こえたのか、こちらを見つめたまま歩いてきた。思わず一歩後ずさるが彼はそんな事お構い無しに私の目の前に立つ。おぉ……身長高い、霧谷よりも大きいかも。

「……この前のか」
「(え?)」
「あのあと異変は無かったか」

 この前? 異変? もしかして、道路にあった黒いもじゃもじゃの事だろうか。イやそれしかない、だってそれ以来全然会ってないし。言葉が出なくて首を縦に振れば「そうか」と短く呟かれた。というか、そんな薄着で寒くないのかな……それと刀……。

「えっと?」
「やはり生者に手を出せるほどの力は無かったか」
「(んん?)」

 話しが読めない、首を傾げている間もキリシマさんはぶつぶつと何かを呟いているし、というかこの状況結構気まずいんだけど。
両手をぎゅっと絡めれば、キリシマさんの後ろから気だるそうな声。

「おい斬島、行くぞ」
「分かった。……気をつけろよ」
「は、い?」

 後ろの人はよく見えなかったけど、キリシマさんは私の頭にぽんと触れて道路の向こう側へと歩き出した。え、待ってキリシマさんの前を歩いている人なんかツルハシ持ってない? ツルハシ実際に見た事ないから分かんないけど、多分あれツルハシだよね。

「ふ、不思議な出会い」

 ポツリと呟いて、私は本来の目的を思い出して慌てて書店へ走り出した。と、同時に携帯が鳴る、タイミング考えろと思いながらもLINEを見れば霧谷からだった。

  成功した! 晴れて恋人になれたぜ!

「おぉ、告白上手く行ったんだ」

 おめでとう、と書いてあるスタンプを押して携帯をポケットに押し込む。霧谷が帰ってきたら根掘り葉掘り聞いてやろう。ルンルン気分で書店へと向かった。
 

「斬島、人間なんかとなに話してたんだよ」
「この前も見かけた奴だ。……なんとなく気になっていた」
「はあ?」
「多分、近いんじゃないか」
「……そん時は肋角さんがなんとかすんだろ」
「そうだな。……帰るぞ、田噛」
「ちっ……だりぃ」



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